その他
甲府市 アウトソーシングをNECに委託 コスト削減、12年間で約4割
2007/05/14 21:10
週刊BCN 2007年05月14日vol.1186掲載
山梨県甲府市はこのほど、市情報システムの「こうふDO(ダウンサイジング/アウトソーシング)計画」に関する包括契約をNECなどと結んだ。契約は、2007‐08年度のシステム構築と09年度から10年間に基幹業務系など主要48業務をデータセンター(IDC)からアウトソーシングでサービス提供を受ける方式。市の試算では、システム資産を保有する機器購入型の調達に比べ、最大4割弱のコスト削減になる。市によれば、「甲府方式」には全国10自治体が関心を示しているという。この先、情報システムの財政負担に悩む自治体で、同方式を採用する動きが広がりそうだ。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
「甲府方式」が全国へ波及か
■総額約47億円で包括契約
甲府市は昨年10月、今年度から稼働する基幹システムなどを包括的にアウトソーシングする計画「こうふDO計画」の正式版を公表。11月には、受託希望事業者を公募し、12月に事業者から提案書を提出させた。CIOを補佐する有識者を加えた第3者機関「こうふPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」などで、デモや価格の評価を実施して委託先を選定した。
最終的には、住民情報や税務など基幹業務系と人事・給与など内部情報系をNEC、ITヘルプデスクなどインフラ系を日本ネットワークサービスに委託することを決定。今年4月6日に両社と総額約46億9800万円で包括契約を結んだ。市販されている最新のパッケージやノウハウを利用し、法改正対応やサポート、運営、大量処理などをアウトソーシングすることで、システム購入方式に比べ、12年間で最大38.5%のコストが削減できると試算している。
アウトソーシングを委託する際、甲府市ではPFI(民間資金活用による公共施設の整備)の手法を採用。延払方式や業績連動支払、サービス品質保証、性能発注方式などを取り入れた。サービス要求水準(SLA)を事業者と結び、定期的にモニタリングをした上で品質低下が見られた場合は、サービス対価を減額。同対価は、3年に1回見直すことが条項に示されている。
システム停止・故障や情報漏えいなど、問題発生時の作業負担費用は、発生事象の責任割合に応じて決定する。経費負担の平準化を図るためには、通常の法令改正を含む構築や運用、改修の全経費を一括契約とし、サービス対価を支払う方式にした。
情報システムの基幹業務系をフルアウトソーシングにする自治体は珍しく、甲府市の一般競争入札には、大手SIベンダーなど5社が参加。最終的には、自治体案件に実績のある3社が競合となり、NECなどが受注した。
■サービスを購入する方式
政府が「e-Japan戦略」を開始する以前の自治体システムは、仕様書作成から大型汎用機の導入、保守・運用まで大手SIベンダーに“1社丸投げ”する方式が一般的だった。しかし、機能不足や稼働にさまざまな制限があり、大型汎用機の維持管理・運用費が法改正のたびに右肩上がりで上昇。多くの自治体で“1社丸投げ”を改め、共通システムの検討やオープンソースによるシステム開発などが加速した。
甲府市行政システム改革室情報政策課は、共通システムやオープンソースの採用に関して、「ライフサイクル全体に対するコスト・品質の最適化効果は限定的だ」(土屋光秋係長)と、アウトソーシングへと舵を切り、独自路線を歩んだという。また、この方式だと、大型汎用機の一括受注や機器購入型の受注に比べ、アウトソーシングは利潤が低そうだが、「適正の利潤は稼げる」と語る。今回の契約には「知的財産権」を市とNECで共有する条項も記されているため、他の自治体に“横展開”することができる。
「甲府方式」には、すでに北海道・北見市や沖縄県・那覇市などが採用に向けて動きだしたようだ。「甲府方式」に対向する方式としては、情報システム開発の詳細な仕様書を自治体職員が作成し、地元企業が受注しやすいように「小分け発注」を行う「長崎方式」や、ソフトウェア開発の専門家を採用して設計・開発・テストのライフサイクルを繰り返す「佐賀方式」などが知られる。
しかし、長崎・佐賀の両方式は、自治体職員にノウハウを植え付ける必要性や専門家を採用する負担が大きいとされる。そのため、「甲府方式」のように、「サービスを買う」スキームによる調達・契約は、財政状況の悪い自治体に採用しやすい方式として広がることが予想される。
山梨県甲府市はこのほど、市情報システムの「こうふDO(ダウンサイジング/アウトソーシング)計画」に関する包括契約をNECなどと結んだ。契約は、2007‐08年度のシステム構築と09年度から10年間に基幹業務系など主要48業務をデータセンター(IDC)からアウトソーシングでサービス提供を受ける方式。市の試算では、システム資産を保有する機器購入型の調達に比べ、最大4割弱のコスト削減になる。市によれば、「甲府方式」には全国10自治体が関心を示しているという。この先、情報システムの財政負担に悩む自治体で、同方式を採用する動きが広がりそうだ。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
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