中堅・中小企業をターゲットとする業務ソフトウェアベンダー市場は、マイクロソフトが今秋リリース予定の次期サーバーOS「Longhorn(開発名)」で、潮目が変わりそうだ。予想に反して新OS「Vista」がビジネス市場で立ち上がらないものの、それまでにIT業界のVista対応が一巡し、同時にLonghornを機に急転し、“特需”を見込めそうだからである。5月7日に開催したBCN主催の「業務ソフト座談会」で国産ベンダー5社は、ここに向けた「次世代製品」を年内にもリリースすることを明らかにした。これに加え、コンサルティングを含めた上流工程の充実やパートナー戦略を強化していくことで意見が一致していた。
【参加者】
■OSK 宇佐美愼治 代表取締役社長/田中努 代表取締役専務
■応研 原田明治 代表取締役社長/岸川剛 取締役
■オービックビジネスコンサルタント(OBC) 和田成史 代表取締役社長/大原泉 取締役
■ピー・シー・エー(PCA) 水谷学 取締役副社長/折登泰樹 専務取締役
■弥生 相馬一徳 常務取締役兼執行役/竹之内学 執行役員
【司会】谷畑良胤(本紙編集長)
07年、連携ソリューションが必須に
“上場予備軍”がターゲットに
司会 2006年の国内業務ソフトウェア市場は、内部統制関連のビジネスで幕を開けたように思います。まず、昨年の市場動向を分析したうえで、どんな分野・領域で成長したかをお聞きします。
OSK・宇佐美 06年は、「ソリューション販売」が順調に伸びました。特に、中堅企業以上の業務ソフトが増加。小規模企業向けは微増でした。内部統制の基盤整備に関する機運が高まったことが大きく影響しました。一方、業種別ソフトも、2ケタ成長しましたから、いよいよ、各業態に応じた明確なソリューションを提供する必要性が高まったと実感した年でもありました。
内部統制に関連しては、基幹系の業務ソフト「Smileシリーズ」に加え、情報系ソフト「eValueシリーズ」を提供しているので、両ソフトの連携とインフラを含めた「ソリューション提案」で大きな効果を出せました。逆に、「会社法」に関するビジネス効果は、あまりなかったという状況です。
弥生・相馬 06年度(06年9月期)の業績は、前年度に比べ2ケタ増で売上高が87億5000万円。内訳は、製品が約35%、その他をサービス関連が占めました。最近は、売上構成比が変わってきており、製品売り上げが拡大しています。昨春には、これまでのユーザー企業より規模の大きい企業を対象にした「ネットワーク版」を発売しましたが、これが売上増に大きく貢献してきています。
メインはやはり家電量販店で販売しているスタンドアローン版で、製品売り上げの半分を占め、06年度は約14万本を出荷。店頭市場では、「会社法」の効果が5000本程度あり、販売本数を大きく伸ばすことができました。BCNランキングによると、06年の業務ソフト分野の店頭市場規模は約14万本。このうち「弥生シリーズ」は、本数ベースで約42%、金額ベースで約60%のシェアを獲得できました。
「ネットワーク版」は06年度までに、累計で約800社に導入しました。仕様を公開したり、SDK(開発キット)があるものの、カスタマイズで稼ぐのでなく、“手離れのよい”製品として、純粋に製品売り上げを伸ばすことができています。
PCA・水谷 「会社法」という話題が出てますが、当社も一昨年度(06年3月期)下期から昨年度上期にかけて需要があり、業績面で恩恵を受けました。ただ、昨年度下期は期待したほどの効果は得られませんでした。
当社では、財団・社団法人向け財務会計システム「PCA公益法人会計」が、公益法人市場で高いシェアを獲得しています。この需要は大幅に増え、引き続き業績に貢献しています。
内部統制に関連した問い合わせが増えています。しかし、それが実需にはつながっていません。この先、内部統制の需要が増すのは間違いないので、この要件を満たす機能を重視した「ものづくり」に力を入れて製品設計していく方針です。内部統制以上に“とらぬ狸の皮算用”として期待しているのが、今夏の参院選後の消費税改正。税対応製品が多数に及ぶため、ここに向けた準備を本格化させているところです。
OBC・和田 06年度(07年3月期)の連結決算は、売上高、経常利益とも前年度比15%以上の増収・増益を達成しました。当社は、全国の販売会社やソフト開発会社、サポート会社、コンサルティング会社などのパートナーと一緒にビジネスを進めております。そのため、ユーザープライスでは、ハードウェア、ソフトウェア、サポートをなど含め年間800-1000億円程度のボリュームをIT市場で形成しているとみています。
このうち昨年度は、J-SOX法に関連した内部統制やセキュリティ、LAN、ネットワークなど、幅広い領域で製品を伸ばすことができました。この先は、J-SOX法関連はもとより、中堅企業で業種・業務ソフトや情報系ソフトなどのIT投資が増えてくると見ていますので、ここに力を入れていきます。
一方で、マイクロソフトの新OS「Windows Vista」や次期サーバーOS「Windows Server Longhorn」などの動向を見据えた「次世代製品」の投入に向けてスタートしています。この意味で06年は、大きな転換期へのステップを踏むことができました。
応研・原田 06年度(06年12月期)の売上高は、前年度に比べ、2ケタ成長には届きませんでしたが、8%を若干下回る増収になりました。伸びが顕著だった製品は、売上・仕入・在庫統合型ソフト「販売大臣」や社会福祉法人向け会計ソフト「福祉大臣」、公益法人向け会計ソフト「公益大臣」。これが全体を引っ張りました。
スタンドアローン版ではなく、SIerと提携して拡販しているLANやネットワーク利用の製品導入が進み、単価アップにもつながりました。今年初めには、J-SOX法に対応し、セキュリティを強化した07年版をリリース。企業内でIT統制を実現しやすいツールに仕上げています。以前は西日本を中心に営業エリアをもっていましたが、全国で平均的に販売を拡大しています。
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