■弥生、量販店市場は大幅減を予測
司会 06年は、内部統制の基盤を整備する機運が高まった年だったようです。さて、すでに5か月目に入りましたが、07年の後半以降には国内業務ソフト市場にどんな“追い風”が吹くのか、逆に需要が伸びない要因はあるのか、見解を述べてください。
OSK・宇佐美 J-SOX法関連の内部統制強化に関する機運は、昨年に引き続きあるでしょう。J-SOX法に対応すべき企業は、株式上場企業およびグループ会社ですが、これに関連する子会社や下請け企業などにも内部統制の強化が迫られます。IT統制ということでは、セキュリティを含めて配慮する必要があり、ニーズはまだまだ続くとみています。
(PCAが指摘した)消費税改正については、まだ不透明ですが、影響はあるとみています。また、開発フローが大変なので、商売としてメリットが薄い制度ですが、減価償却制度の大幅改正といった法・制度改正などのニーズが高まるとみていますし、そのあたりの案件を拾っていきたいと考えています。
弥生・相馬 量販店市場の業務ソフトは昨年、全体で約14万本に達していることは先に述べました。07年度の量販店市場は、昨年に比べて売上高ベースで8-9割のボリュームに落ちると分析しています。「廉価版」が出回る一方で、当社の「弥生シリーズ」を含めた高額ソフトの2極化が進んでいるためです。
訪販市場についてですが、クライアント/サーバー(C/S)型であるネットワーク版市場は、他社製品を含め、全体で1万5000本と読んでいます。ネットワーク版への参入は、最後発で、製品群も会計と販売だけで、“片肺飛行”でした。6月に給与のネットワーク版を出し業務ソフトの「販・財・給」が揃うので、今期中(07年9月期)に昨年度の2倍、1500社への導入を目標としています。
弥生・竹之内 弥生の製品面での補足を致します。05年にリリースしたネットワーク版は、株式上場を目指す“予備軍”の企業に多く導入されました。スタンドアローン版を使っている既存ユーザー企業にも、将来の上場を見据える企業があります。
J-SOX法などに関連した内部統制の動きで、企業内業務のあるべき姿が固まりつつある。参入は再後発でも、いいタイミングだったと考えています。
OBC・和田 07年度(08年3月期)もパートナー戦略を引き続き重視します。業種・業務、LAN、ネットワーク、新ERP(統合基幹業務システム)の「奉行シリーズ」製品のラインアップの強化、このほか、J-SOX法と内部統制に対応した中堅・中小企業や上場企業向けの連携ソリューションを充実します。
これに加え、06年度には(上流工程で)ITコーディネータやコンサルタントとの連携など、パートナーが得意とする分野を相互に生かす環境ができています。今年はパートナー同士で地域別にコミュニティを形成できる体制を整備します。
新しいタイアップ形式も、さらに増やしていきたいと考えています。ユーザー企業のニーズ、要求水準が複雑化・高度化しているので、当社だけではすべてを対応できません。専門分野のスキルをもつパートナーとビジネス協業をするために、(M&Aや提携を含め)磨きをかけていきます。
応研・原田 直接的には上場企業をターゲットにしていませんが、07年はこの“予備軍”を含めた中堅・中小企業の市場を伸ばしたいと考えています。ただ、大手企業がJ-SOX法に対応することによる“空気”が中堅・中小企業にも漂っています。それを1つのチャンスと捉えた戦略を展開します。
このため、Vistaに対応するなど、製品を強化し、提携する公認会計事務所とともに“予備軍”に働きかけていきます。最近は、SIerとの関係が強まり、ソリューション・ビジネスに力を入れていることもあって、ここに売り上げがシフトし始めています。
応研・岸川 補足しますと、ご出席の各社と傾向は似ているのですが、当社は中規模の既存ユーザー企業が多く、上場企業をターゲットにするというより、別の方向性をもっています。内部統制に対応したITや会計の監査指針が示されて監査法人などによる外部監査が当たり前になると、“予備軍”と呼ぶ領域の企業が何をすべきかが明確になる。
「会社法」の施行に際しては、これに対応するためにスタンドアローン版を使う企業がネットワーク版に切り替えたように、減価償却と資産管理の制度変更などに伴い、当社の下位製品を使うユーザー企業が上位版に替えるでしょう。07年は、セキュリティやログ管理など、内部統制への準備が始まるため、その後にワークフローやドキュメントを「大臣シリーズ」につなぐソリューションを展開していきます。
PCA・水谷 内部統制は、07年のキーワードとしてありますが、どうも大きな実需には結びつかないかもしれないと考えています。上場企業は現在、業務プロセスの文書化に追われているからです。一部には、文書化があまりにも大変で、監査法人が焦っているケースもあると聞きます。実際の業務を内部統制に対応する作業は遅れてくるでしょう。基幹システムを大がかりに入れ替えることは難しく、ステップを踏みながら対応する企業が多いと見ています。
既存製品にもログ管理機能などはあり、これら機能を改善し、業務がこなれてきたら、新しいステージに入ると見ています。急激ではなく、なだらかに進み、その先に実需があると判断しています。内部統制関連では、早急に大きな売り上げを見込むことはしません。
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