■内部統制の機運は見解に相違
司会 PCAの水谷副社長が指摘される通り、各社がターゲットとする“上場予備軍”に内部統制対応が本当に浸透するかどうか私も疑問視しています。それについて、各社がどう考えているのか、あるいは浸透させるためにどんな展開をするのかお聞かせください。
OSK・宇佐美 当社では、中堅企業以上の商談が増えているため、上場を目指す企業が内部統制に対応する傾向にあると実感しています。では、中堅企業以下に対してはどうかというと、業界全体の雰囲気に押されて、営業マンが見込み顧客に案件を持っていく傾向があり、内部統制に関しては自然と盛り上がっています。
バックエンドの業務ソフトではなく、今は情報系システムを内部統制に対応しようという動きがあります。業務ソフトの対応は、少し後になっているという印象はあります。ただ、顧客先で一緒に内部統制の話題を検討するなかで、コンサルティング案件が伸びていますので、機運は十分にあるでしょう。
弥生・相馬 正直、内部統制関連の需要に関して、分からない部分がかなりあります。今日、明日にできることではないので、製品開発自体では念頭におく必要があるでしょう。
弥生・竹之内 先ほどから出ている「内部統制関連で需要が増えるか?」という視点から判断すると、PCAの水谷副社長が指摘された通り、内部統制があるから積極的に業務ソフトを買い替えるという状況にはないでしょう。ただ、内部統制の考え方が、上場企業を中心に1つの組織運営のあり方として浸透することで、非上場企業にも組織運営上の配慮をシステムに求められてきます。
OBC・和田 当社の営業現場では、J-SOX法やこれらに関連する内部統制で、非常に盛り上がっています。上場企業とグループ会社を含めて全国に7万社あります。当社のユーザー企業には、上場企業のグループ会社が多いんですよ。内部統制の機能は、「奉行シリーズ」で必須となっています。
このため昨年度は、LAN、ネットワーク、新ERPが前年度に比べ2割増えました。ここを強化することは、戦略的に極めて重要。7万社もありますので、多数ある中堅ERPベンダーですべてを賄うことはできず、ここと対抗するのではなく、こうしたベンダーの製品と連携してビジネスを展開できるでしょう。
応研・原田 当社にとって内部統制はビジネスチャンスになります。内部統制をテーマにした説明会を開くと、参加者がとても多い。すでに機運があると見て、これを材料に拡販します。「大臣シリーズ」の07年版は、内部統制に対応できるロジックに組み上げていますので、公認会計事務所などと連携してパートナーに拡販していきます。
PCA・水谷 決して、内部統制を軽視しているわけではないんですよ。当社は公認会計士(現・川島正夫会長)が設立したベンダーですし、私自身、設立当初から会計監査を15年もやりましたので、内部統制の重要性は一番理解しているつもりです。
当社の中小企業向け業務ソフト「PCA8 V.2」ですら、内部統制を重視したつくりにしています。アクセス権限や内部承認、操作ログを残す機能などは、Windows版の会計ソフトで搭載されています。例えば、「Active Directory」を使ったシングルサインオンなどは、業界の先陣を切って対応しました。そのため、既存製品で十分に内部統制はできるんです。
内部統制に対応していない製品は、ユーザー企業から選択されませんし、対応は必須です。
・後編に続く