サーバーメーカー各社によるブレード販売の“陣取り合戦”が加速している。戦略製品の市場投入や新コンセプトで事業拡大を促進。“統合”をテーマにユーザー企業のすそ野が広がりつつあることから、エンクロージャの売価引き下げなど価格競争も加熱している。シェア争いに拍車がかかっている状況だ。（佐相彰彦●取材／文）

顧客の囲い込み、新規開拓を促進

　国内ブレードサーバー市場でシェアトップの日本IBMは、“仮想化”を切り口にブレードサーバーとISVの製品・サービスの連携で提案力を強化。同社製品へフォーカスするとともに高付加価値のビジネスを手がける販売代理店に対して手厚いインセンティブ制度を設けている。「当社製品を売りたくなる、売りやすくなる制度に徹している」（藤本司郎・システム製品事業マーケティング＆パートナー営業担当）とアピール。販売代理店とのパートナーシップを深めることで首位の座を堅持する。

　ほかのメーカーもトップシェア奪取に懸命だ。日立製作所は、「今年度（2008年3月期）は、ブレードの販売台数を前年度の2倍に引き上げる」（宇賀神敦・統合プラットフォーム販売本部販売統括部長）と強気の姿勢。昨年9月に市場投入した「BS320」でSMB（中堅・中小企業）を攻略する体制が整ったという。また、今年度早々に、サービスプロバイダを新規開拓するための専門プロジェクトチームを設置。「対象のサービスプロバイダを10社に絞り込み、データセンターでの用途提案を徹底することで確実にユーザー企業として獲得する」考えだ。

　日本ヒューレット・パッカード（日本HP）は、シェア拡大の切り札として、売価60万円台のエンクロージャを、わずか315円で販売するといった低価格キャンペーンを4月下旬から開始した。「SMB市場で拡販を図る」（松本芳武・執行役員テクノロジーソリューション事業統括エンタープライズストレージ・サーバ統括本部長）ことを掲げており、「今年末の時点で、ブレード市場で40％のシェアを獲得する」と鼻息が荒い。

　NECでは、サーバー10－50台設置の中堅規模システムを導入する企業を対象として、ブレードサーバーを中核にクライアントとストレージも組み合わせてシステムを提供。“統合プラットフォーム”の導入を促していく。山科俊治・クライアント・サーバ販売推進本部長は、「運用の効率化を視野に、インフラ基盤の統合が中堅企業まで広がっている」と分析。販売代理店が統合プラットフォームを売ることができるように教育プログラムも用意し、「ブレードサーバー市場で3年以内にトップシェア獲得する」と宣言する。

　ブレードサーバー市場でシェアが1ケタ台の富士通も、「PRIMERGY（プライマジー）BX620 S4」を発売した。増田実夫・パーソナルビジネス本部長代理は、「今年度（08年3月期）は基盤を固め、現状の2倍以上にあたる15％のシェアを目指す」と意気込む。田中豊久・パーソナルマーケティング統括部PRIMERGY担当プロジェクト部長は、「中堅企業でユーザー企業を増やす」としている。

　PCサーバー市場で上位3社以内にランクインするデルは、ブレードの販売について慎重だ。桜田仁隆・エンタープライズマーケティング本部長は、「無理にブレードを拡販するつもりはない。ラックマウントとブレードでソリューションを提案し、ユーザー企業が求めるほうを提供していく」と、積極的な姿勢にはないことを示す。

　調査会社のノークリサーチによれば、国内PCサーバー出荷台数に占めるブレードの割合は昨年度（07年3月期）で約7％、今年度が10％程度に高まると予測する。伊嶋謙二社長は、「これまでも、緩やかな成長だっため、今年に入って急激に需要が増えるということはないだろう。しかし、PCサーバー全体の成長率と比べれば伸びることは確か」とみている。IDC Japanによれば、06年の国内ブレードサーバーシェアは日本IBM（35％）がトップ、次いで日立（22％）、NEC（18％）、日本HP（16％）、富士通（6％）、デル（3％）の順。メーカー各社は、ブレードサーバーが中堅企業やデータセンターにまで普及するとの判断でビジネスの拡大を図っている。伸びる市場だけに、シェア獲得合戦が一段と熱を帯びそうだ。