大塚商会(大塚裕司社長)は、多機能なデジタル複合機(MFP)の利用を促す「PV(プリント・ボリューム)拡大プロジェクト」を開始した。印刷コストの削減や業務内容に応じた印刷の最適運用などを提案する。同社によると、国内企業にあるMFPの約3割は4年半以上使用している多年経過機という。ここにきて国内MFP市場は成長率が鈍化傾向にあるため、各社は未導入の新規市場だけでなく、他社機を置く企業に対して自社取扱機への買い換えを促している。まずは既存顧客にMFPの利用を加速する同プロジェクトで、自陣営の顧客離れを防ぐ戦略に出たようだ。
顧客離れ防止も狙いに

「PV拡大プロジェクト」は昨年末から準備作業を開始し、今年2月から本格展開している。最近のMFPは、多彩な印刷ができ、フィニッシャーもプリント書類のホチキス止めができるなど、機能が高度化している。だが、同社がMFPを複数台保有する既存顧客を調査したところ、こうした機能がほとんど使われていない実態が明らかになった。
このため、同社ではまず、MFPの活用率を上げるため両面印刷や四分割印刷などプリンタ機能を誰でも使いこなせるようにするため、プリンタドライバにこうした機能をデフォルトで表示できるツールを利用し、企業の業務内容に応じてアドオンする。「MFPを導入しても操作や設定が面倒で、コピーやプリンタの単純な機能しか利用していない例がほとんど。デフォルト機能を搭載することで、複雑な操作をせずに簡単に利用できるプリンタ環境にすることができる」(矢野克尚・取締役兼上席執行役員エリア部門長)と、独自の展開で他社との差別化を図る方針だ。
今年に入ってからは、各企業に応じたデフォルトのプリンタドライバを設定したり、MFPの有効活用を支援する有償・無償の再配置・最適化コンサルティングを開始する。MFPの高速カラー化が進展し、企業ではプレゼンテーション資料などをカラーで大量に印刷する傾向にある。カラーはモノクロに比べコピーチャージや消耗品が高いため、事務コストを削減しようと、大手企業などでカラー印刷を制限する動きも出ている。だが、「ドキュメントのプリンタ出力の運用をちょっと工夫・活用するだけで経費削減や業務効率向上を図れる」と、矢野取締役は強調する。
同社は国内企業に配置されたMFPが、4年半以上の多年利用になると分析。これを機に、「MFPの利用価値を享受できていない企業は、他社取扱機に乗り換えてしまう可能性がある」(同)と危機感を募らせ同プロジェクトを開始したという。
同社の「ODS(Ohtsuka Document Solutions)21」事業は、セキュリティや個人情報保護法の影響を受け、2005年度(05年12月期)の売上高が前年度に比べ30%増と急拡大したが、06年度は6.2%増にとどまった。国内MFPの出荷台数も数%の低成長率であるため、矢野取締役は「価格を下げて売れる時代は終わった。いかに付加価値や利便性を追求するかが問われている」と、自社のSIとドキュメントソリューションを融合させ、他社にない提案をすることでMFPの販売を拡大し、コピーチャージや消耗品のストックを安定的に確保することを目指す。
