UNIXサーバーメーカー各社による新製品の発売が相次いでいる。国内UNIX市場は縮小傾向にあるものの、各メーカーともUNIXをシステムの中核製品として位置づける方針を変えていない。既存顧客をUNIXベースの基幹システムで囲い込むことで、新たなビジネスチャンスにつなげるのが狙いだ。
市場縮小も中核に位置づけ
日本IBMは、次世代プロセッサに位置づけた「POWER6」搭載のミッドレンジUNIXサーバー「IBM System p モデル570」の販売を開始した。同サーバーは、リッチ・メディアコンテンツやウェブ2.0など新しいワークロードへの対応が可能なことが特徴。武藤和博・システム製品事業理事システムp事業部長は、「この製品の発売により、日本市場でシェアを拡大していくための素地が固まった」と自信をみせる。同社は、国内市場で30%以上のシェアを確保している。しかし、「今の状況に決して満足していない。さらに積極的に他社のシェアを奪っていく」と意欲的だ。
IBMからプロセッサのOEM提供を受けている日立製作所は、「EP8000」シリーズで「POWER6」を搭載した「570」を発売。榊原忠幸・第一サーバ本部第一部EPサーバ担当部長は、「この製品は、ミッドレンジクラスだが、ハイエンドクラスを導入するユーザー企業のリプレースや、メインフレームからの乗り換えを促せる」とみている。
富士通とサン・マイクロシステムズの両社は、共同開発した「SPARC Enterprise(スパーク・エンタープライズ)」でUNIXサーバー市場での地位を高めたい考え。富士通の佐々木一名・プロダクトマーケティング統括部エンタープライズサーバ部長は、「今年度(2008年3月期)は、既存のUNIXサーバーを含めて前年度比7%増の1万7000台を目指す」としている。サンでは、「売上規模が2ケタ成長することは間違いない」(九里禎久・プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部長)と試算する。
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、「Integrity(インテグリティ)」シリーズのハイエンドモデル「Super dome(スーパードーム)」が、「他社の新製品より性能が優れている」(榎本敏之・エンタープライズストレージ・サーバ統括本部ビジネスクリティカルサーバ製品本部長)と自信を示す。
UNIXベースの新しい提案を行っていく動きも出てきた。富士通では、「エントリーモデルでウェブなどフロントシステムの需要を獲得できるだろう」(佐々木部長)と、近くUNIXサーバー販売の9割近くがエントリーモデルで占めるようになるとみている。日本IBMでは販売強化策として、「SIerとのパートナーシップを深めていく」(武藤事業部長)方針を示しており、他社製品からの移行を促した販売代理店に対してインセンティブを引き上げるなどの支援策を打ち出した。日本HPでは、「“仮想化”をベースに、アプリケーションベンダーとの協調関係を図っていく必要がある」(榎本本部長)としている。これにより、「PCサーバーの範囲であるフロントエンドのシステム案件も獲得していく」ことを狙う。ブレードの出荷台数を前年度比2倍程度と見込む日立でも、「UNIXサーバーが寄与する」(榊原担当部長)。サンでは、「ユーザー企業がオープン系で統合や仮想化を実現するためのハードルをかなり下げた」(野瀬昭良・プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部主幹部長)と、スパーク・エンタープライズでメインフレーム需要がオープン化に流れる可能性が高いことを示唆する。
電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、UNIXサーバーの出荷実績は減少傾向にある。06年度(07年3月期)は、台数が5万9161台(前年度比6%減)、金額が2800億6800万円(同13%減)だった。市場は成熟期に入っているものの、各社とも既存顧客を囲い込み、「最低でも前年並みの売上規模は確実に維持する」ことを見込んでいる。これは、UNIXがサーバー事業のなかで中核製品であることに変わりないことを示している。