SP獲得が成長の決め手
通信事業者のネットワーク構想に、「NGN(次世代通信網)」というキーワードがある。これは、PBX(構内交換機)を通じて提供してきた音声サービスを、IP化で映像とデータ、アプリケーションと組み合わせてサービスを提供するというものだ。NTTグループの「フレッツ光」をはじめ、これまでもコンシューマ向けには映像と音声、データの“トリプルプレイサービス”を提供してきた。これを業務アプリケーションとつながるサービスとして提供することで法人向け市場でのブロードバンド化を図るという狙いがある。NTTグループでは現在、NGNサービス提供に向けフィールドトライアルを実施している状況で、08年度から本格的なサービスに入る。こうした状況からNIerをはじめとしたネットワーク関連ベンダーは、今年度を「勝負の年」と位置づけてビジネスの拡大を図ろうと懸命だ。
NECでは、NGN関連ビジネスの売上高を前年度の2倍以上にあたる2000億円と見込んでいる。ネットワンシステムズでは、「NGNという観点で受注が増えるかどうかは読めないが、SPがIDCのネットワークをリプレースする傾向が高まっていることから、SP向け事業が拡大することは間違いない。天気図でいえば“晴れ”」(澤田脩社長)とみている。また、地方のIDCがITシステムのホスティングだけでなく、SaaS/ASPでビジネス領域の拡大を推し進めるケースも出ている。そのため、スイッチメーカーのなかでは「地方を中心にデータセンターのリプレースを促していく」(リバーベッドテクノロジーの遠井雅和社長)動きや「地場で大手のSIerとのパートナーシップを深めていきたい」(F5ネットワークスジャパンの長崎忠雄社長)などの声もあがる。
SPによるネットワークリプレースが活発化しつつあるものの、法人向け市場ではSaaS/ASPの浸透でネットワークリプレース需要が増えるのだろうか。ネットワークをブロードバンド化していないユーザー企業の場合は、SaaS/ASPの導入に伴い回線を太くするなどネットワークリプレースを行うかもしれない。しかし、社内システムを一切持たずに基幹システムを含めてデータセンターなどにアウトソーシングする傾向が高まるとすれば、ユーザー企業が強固なネットワークインフラを社内で保有するというケースが少なくなるのではないだろうか。
こうした状況を視野に入れ、ネットワーク分野で新しいビジネス領域に参入するベンダーもある。ネットワンシステムズでは、ネットワークだけでなく、サーバーやストレージ、IP電話のシステム運用、セキュリティ管理などをIPネットワーク経由で行う総合システム運用サービス拠点「エキスパートオペレーションセンター(XOC)」を設置。同センターを中核として、ネットワークベースのアウトソーシングを提供し拡大できる基盤を整備している。NECでは、ユーザー企業が従量課金方式でネットワークシステムを利用できる「オンデマンド型ネットワークサービス」の提供を開始した。
通信事業者とパートナーシップを深める動きもある。ユニアデックスはKDDIと提携し、サーバーや通信ネットワークなどの構築・保守をワンストップで提供する「企業向けICTソリューションサービス」を提供中だ。「このサービスは、さまざまな方向でビジネスの幅が広がることは間違いない」(萩田勝政・常務執行役員ソフトウェアサービス事業グループ長)と判断する。
SaaS/ASPの台頭と軌を一にして、ネットワークシステムを構築していたベンダーにビジネスモデルの変革が求められているということだ。
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