The future IPOへのシナリオ描く
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スタンドアローンの業務ソフトを中核とする弥生にとって、「SaaS(Software as a Service)の波」は逆風になるという懸念がある。しかし、「提供方法が変わるだけで、本質は変わらない」と両社長。一方、710億円という市場の評価を得たものの、その額の重さを考えると、IPOをしてイグジットする道を選択できるのかという心配もある。その点についても、見解を聞いてみた。
──さて、これからの弥生です。ここへきて「SaaS」などホスティングビジネスが注目され、業務ソフトも「所有から利用へ」と時代が変化していきそうです。今までは、保守・メンテナンスや年次ごとのバージョンアップを確実にすることが「サービス」でした。これからは、トップベンダーの弥生ですら、従来と異なるビジネス展開が必要になると思うのですが…。
平松 「もっとサービスを」ですね。ここ数年間で、弥生は(保守契約率をあげて収益を得る)「ストック型ビジネス」へ転換してきました。インテュイット時代にあった7万の保守契約ユーザーが、現在は14万を超えています。これが近い将来には、20万になるわけですよ。
今までのスタンドアローン型のパッケージビジネスだけでなく、クライアント/サーバー型のネットワーク版をすでに展開していますし、将来的にはSaaS型の提供もあるでしょう。オンデマンドの流れは弥生にとっては、ビジネス・オポチュニティ(事業機会)が広がることになります。ソフトの提供環境が変化しても、顧客に与えるのは、基本的に「かんたん・あんしん」であり、その象徴が弥生ということに変わりはありません。
飼沼 中小企業がITを利用して自社内で会計処理する「自計化」率とのかかわりが重要になります。いかに「自計化」を促進できるかで、市場をまだまだ開拓できる分野であるとみています。
SaaSに関しては、勉強会を続けて実施しています。ただ、提供の方法が変わるだけで、SaaSが流行っているからといって、旧来のモノがリセットされるわけではありません。弥生は14万という顧客を抱えています。この既存顧客などが望むのであれば、SaaSという提供方法をとればいいのです。
──既存ソフトの提供方法が変わるだけで、弥生の本筋に変わりはないことが確認できました。さて、改めて聞きます。今回の譲渡でマーケットからあれだけの評価を得ました。“悲願”のIPOは、このままで本当に果たせるのでしょうか。
飼沼 そこは、MBKパートナーズとの話し合いに基づき決めていくことですので、弥生だけで判断できるものではありません。ただ、ファンド(運用資金)ですので、どこかの段階でイグジットする必要があります。IPOをすることが、弥生にとっても、MBKパートナーズにとってもいいことであるシナリオやスキームを用意する必要があるでしょう。
平松 そう、IPOは1つの選択肢です。
飼沼 グループ会社の良さは、グループ内で連携しやすく、とっかかりが早いというのがあります。逆に、欠点をいえば、「そこしかできない」という制限があります。制限のなかで、アベイラブル(利用可能)なベストなモノを選ぶのというのであれば、フリーハンド(独立)を得ていたほうがいいはずです。
──最後にライブドアHDの今後について伺います。例えば、4月に分社化したポータル・ネットワーク事業会社、新会社・ライブドアのポータルサイト「livedoor」のユーザー数は、「ライブドア事件」のあと増え続け、広告収入も旧ライブドアのピーク時の7割まで回復したそうですね。今後、グループ全体を含めどんな企業に変身していくのでしょうか。 平松 ライブドアについては、今期(07年9月期)中に単月・最終黒字を出すことが目標で、達成できそうです。つまり、(旧ライブドアが発足当時に中核としていた)ポータルとネットワーク事業で、単月黒字を果たすということです。
ライブドアは、テクノロジー・カンパニーなのです。ブログ開設数(218万人を突破)は「日本一」(ライブドア調べ)で、CGM(消費者生成メディア)などを含め、世界に目を向けても「Web2.0」関連の技術力に長けています。RSSリーダーは、英語版がかなり海外で利用されています。「ライブドア事件」の打撃を受けながらも、キーとなるエンジニアは誰も辞めていません。もっと「顧客参加型」のインターネットの世界を広げ、そのパイオニアになってもらいたいです。(週刊BCN 2007年10月1日号掲載)