その他
大手SIerのEDIビジネス 攻防戦が激化
2007/10/15 14:53
週刊BCN 2007年10月15日vol.1207掲載
大手SIerのEDI(企業間電子商取引)事業を巡る攻防戦が活発化している。XML技術を活用した次世代EDIの本格普及が現実味を帯びるなか、大手SIerはビジネスの抜本的な見直しに着手。新しいデータセンターサービスや独自のパッケージソフトの開発に力を入れる。EDIシステムの基盤が大幅に変わる見通しで、メインフレームやオフコン系の古い基幹業務システムでは対応できないケースも出てくる。EDIの切り替えのタイミングで、「業務システムの移行に伴う需要を掘り起こしていく」(大手SIer幹部)と、サプライチェーン全体の刷新を視野に入れたビジネス展開を目指す。(安藤章司●取材/文)
標的は基幹業務システム ■国際標準ebXML採用進む EDIで得た電子データは基幹業務システムに連結してこそ完成度の高い企業間サプライチェーンが成り立つ。だが、従来は発注者ごとにデータ形式が異なることが多かったため、基幹業務との接続が十分にできない課題があった。次世代EDIはデータ形式を標準化することでサプライチェーン全体の効率を高めるのが狙いだ。 次世代EDIの実現に向け、流通業や製造業における実証実験が相次いでいる。流通業界では経済産業省の「流通システム標準化事業」などを通じて実証実験を行い、すでに一部では実用化に移行。製造業界では共通XML/EDI実用化推進協議会(COXEC)などで実証実験を昨年度までに実施している。業界ごとにアプローチ方法に違いはあるものの、XMLをベースにしている点で共通する。とりわけ企業間電子商取引向けに設計された国際標準「ebXML(企業間電子商取引用XML)」を使うケースが目立つ。 こうした動きに敏感に反応する大手SIerも出てきている。TISはCOXECの実証実験に参加した実績を生かし、中堅中小企業に強いERP(基幹業務システム)ベンダーのオービックビジネスコンサルタント(OBC)と組んで次世代EDIサービスを本格的に立ち上げる。サービス名称は「ECセンター for 奉行」で、ECセンターはTISが運営し、OBCの主力ERPの奉行シリーズと連携させることで高効率な企業間サプライチェーンを目指すものだ。 流通システム標準化事業に参加する日立情報システムズは、ebXMLをベースとした標準規格「流通ビジネスメッセージ標準」に対応したEDIパッケージ新製品を早ければ今年度中にも製品化する。TIS・OBCの新型EDIもXMLをベースとしたもので、流通ビジネスメッセージ標準にも対応する予定だ。■ERP需要を掘り起こせ EDIは過去20年余りにわたって続いてきたもので、データセンター事業に強い大手SIerが寡占的なシェアを確保する成熟市場である。だが、ebXMLなど国際規格への移行で、にわかに市場が活気づいてきた。顧客企業がサプライチェーン全体を見直すきっかけになることから、ITベンダーにとっては大きなビジネスチャンスになる。 ただ、実際のところ“EDIサービス単体”では意外に儲からない。個別の規格をゼロから開発するのとは異なり、ebXMLはすでにでき上がった規格であり、手順も決められている。オープンな規格だけにITベンダーによる囲い込みは不可能だ。 ターゲットはEDIの前後にあるERPなどの業務システムに絞るわけだが、企業間サプライチェーンの要となるEDI部分のビジネスを失ってしまうと、業務システム需要を掘り起こすチャンスも大幅に減少する。データ交換の中核はしっかり押さえつつ、業務システム部分のつくり込みで収益を高めるのが基本路線である。 EDIに派生する業務システムのビジネスは、「EDIデータの交換手数料収入のざっくり10倍以上の規模感がある」(日立情報システムズの岩下利幸・営業統括本部副本部長)と打ち明ける。ebXMLは汎用性が高く、さまざまなデータをやりとりできる柔軟性があるため、従来のEDIよりもデータ量や項目数などが増加。古いメインフレームやオフコン系のシステムでは十分にデータを取り込めないことも想定され、基幹システムの入れ替えへと結びつくものと期待されている。■プレーヤー入れ替えも TISがOBCと真っ先に組んだのもこのためだ。大手顧客を相手にすることが多かったTISは、中堅中小企業向けの有効な業務システムの品揃えが薄い。この領域に強い奉行シリーズを活用することで、「新式EDIの新規顧客を獲得すると同時に、業務システムもしっかり押さえる」(TISの山田英司・営業推進本部ECセンター事業推進室長)と一石二鳥を目論む。大手企業の基幹業務システムはTISの得意とするところであり、OBCと連携することで攻められる範囲がぐっと広がる。 日立情報システムズは、もともと中堅中小の業務システムに強いSIerであることから、中堅中小企業向けのオリジナルERPパッケージ「TENSUITE(テンスイート)」や、同じく中堅中小向けの「SAP Business One」などを軸にビジネス展開を図る。 次世代EDIでは「データ共有化」の動きも活発だ。共通的な商品マスターを保持し、かつ複数のEDIセンターで共有することも想定されている。将来的にはebXMLや共有マスターをベースに業界の壁を越えたEDI基盤の構築も進めていく方向にある。 EDIの基盤が大きく変化することは、シェアがそれほど高くないSIerにとっても大きなビジネスチャンスになり得る。企業や業界の壁を越えたサプライチェーンを結合させるのが次世代EDIの役割であり、この部分を押さえることはサプライチェーンビジネスの拡大に役立つ。EDI・サプライチェーンの主要プレーヤーが入り乱れた攻防戦が激しさを増しそうだ。【チャンスの芽】 ・EDIのXML化、商品マスター共有化の波に乗り遅れるな ・企業間サプライチェーン全体を見据えた戦略を立てろ ・変化はチャンス。EDI移行期は新規参入の絶好の商機
大手SIerのEDI(企業間電子商取引)事業を巡る攻防戦が活発化している。XML技術を活用した次世代EDIの本格普及が現実味を帯びるなか、大手SIerはビジネスの抜本的な見直しに着手。新しいデータセンターサービスや独自のパッケージソフトの開発に力を入れる。EDIシステムの基盤が大幅に変わる見通しで、メインフレームやオフコン系の古い基幹業務システムでは対応できないケースも出てくる。EDIの切り替えのタイミングで、「業務システムの移行に伴う需要を掘り起こしていく」(大手SIer幹部)と、サプライチェーン全体の刷新を視野に入れたビジネス展開を目指す。(安藤章司●取材/文)
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