その他
野村総合研究所 強気の経営計画の裏にあるもの 新たな収益基盤を開拓へ
2007/12/10 21:10
週刊BCN 2007年12月10日vol.1215掲載
野村総合研究所(NRI、藤沼彰久社長)の中期経営計画が明らかになった。2015年度まで連結売上高を年率平均7%成長させ、営業利益率12-13%を確保する。M&Aを視野に入れつつグループ年商6000億円を目指すという意欲的なものだ。しかし、これを実現するには新たな収益基盤を開拓しなければならないという課題もある。今年度中間期(07年4-9月期)の業種別売上高構成比は金融分野が67.2%と、前年同期比で3ポイント近く増えた。特定業種へ過度に依存する構造から脱却する必要に迫られている。(安藤章司●取材/文)
金融依存からの脱却が課題
■“一本足打法”では限界に
今年度中間期の連結売上高は前年同期比12.8%増の1651億円、営業利益は同31.5%増の274億円、営業利益率は16.6%を記録。年商3000億円クラスの大手SIerでは異例の高収益を記録した。高成長を率いてきた藤沼社長をして「実力以上」と言わしめるほど、予想を上回る好業績だった。
ただ、内実をみると手放しでは喜べない側面がある。売上高に占める金融業向けの比率が7割近くと高すぎる点である。藤沼社長は「金融は5割程度」と、一応の目安を定めていたが、歯止めが利かなかった。02年の社長就任時から昨年度までのわずか5年間で、同社は連結売上高を800億円余りも上乗せしてきた。金融依存は急成長の歪みともいえる部分である。
中期経営計画で示すトップライン成長を持続していくためには、現状の「金融一本足打法」(藤沼社長)ではいずれ限界がみえる。金融業はIT投資の傾向に波がある。規制が多いこともあるが、同業他社と横並びで投資することも多く、減り始めると一斉に減ることが過去にもあった。折しもメガバンクのシステム統合案件が一段落する来年度以降は、金融業のIT投資が減少する“2009年問題”が現実味を帯びてきている。
「今の業種ポートフォリオでは、まずいことになる」。中期経営計画を練るに当たって、金融への依存度の大きさは大きな課題として浮上している。これを改善するため、今年度から「中長期の仕込み」の優先順位を意識的に上げてきた。ソフトウェア投資や研究開発、人材育成など成長を持続させる仕組みづくりを加速させる。仮に金融分野のIT投資が減速しても、他の業種でカバーできる体制づくりを急ぐ。
■高収益モデルを他業種に展開
NRIのビジネスモデルは、特定業種に強い独自の業務アプリケーションの横展開、アウトソーシング、そして個別のシステム開発=SIの大きく分けて3つ。このうち個別SIについては人手がかかることもあり、営業利益率は10%余り。大きなプロジェクトでつまずけば利益はたちまち吹き飛ぶ構図は、他のSIerと何ら変わるところはない。違うのは特定業種でデファクトスタンダードといわれるような強い自前の業務アプリケーションを持つことと、アウトソーシングの徹底した改善をベースとしたコストダウンで高収益を生みだしている点にある。
この高収益の“NRIモデル”を、他の業種でも確立させることが今後の中期経営計画で求められている。このままでは、金融のIT投資が鈍ったとたんに「慌てふためくことになる」と危機感を募らせる。
当面のターゲットは流通や通信など。流通分野では、セブン&アイ・ホールディングスを大口顧客に持ち、ここで得たノウハウは十分に横展開できる。同じく大口顧客の野村ホールディングスのシステム構築で得たノウハウを他の証券会社へ横展開して成功を収めたパターンだ。ミッションクリティカルな基幹システムに強いことから電力や通信などインフラ系も有望である。この分野では実績がまだ少ないことから「M&Aも視野に入れる」と、これまで十分に手が回っていなかったM&Aにも取り組んでいく。
金融に次ぐ業種の柱を打ち立てていく過程では、先行投資や販管費が増えることも予想される。実力の範囲内とする営業利益率12-13%を維持しながらトップラインを年率7%で上げる。一方で国内情報サービス産業の市場規模は「実質規模で約10兆円。3000億円そこそこの当社が伸びる余地はまだある」と強気の方針を打ち出している。
野村総合研究所(NRI、藤沼彰久社長)の中期経営計画が明らかになった。2015年度まで連結売上高を年率平均7%成長させ、営業利益率12-13%を確保する。M&Aを視野に入れつつグループ年商6000億円を目指すという意欲的なものだ。しかし、これを実現するには新たな収益基盤を開拓しなければならないという課題もある。今年度中間期(07年4-9月期)の業種別売上高構成比は金融分野が67.2%と、前年同期比で3ポイント近く増えた。特定業種へ過度に依存する構造から脱却する必要に迫られている。(安藤章司●取材/文)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…