スイッチやルータを中心にNIや機器販売を手がけるネットワーク系販社にとって、2008年の天気図は“晴れ”。SIerとの合併やアライアンスなどでビジネス拡大が図れるとの見方が強い。マーケットには、NGN(次世代ネットワーク網)をはじめ、仮想化などネットワークに関連する話題も多い。アプリケーションを含めたコンピュータシステムの製品・サービス提供も視野に入れることが重要といえそうだ。(佐相彰彦●取材/文)
NGNなどビジネスチャンスも

07年、NIerをはじめとするネットワーク系販社は、まさに転換期を迎えた。主要ベンダー各社は、スイッチやルータなどネットワーク機器の販売が厳しいことから、ビジネスモデルの転換を強いられた。NIerのネクストコムは、SIerの三井情報開発と合併し、三井情報としてSIとNIの融合を追求できる会社に生まれ変わった。ネットマークスは日本ユニシスの子会社として再スタートを切っている。ネットワーク機器の販売が厳しい状況であることから、SIerとの統合、SIerの傘下に収まることを進めたわけだが、ビジネスについては結果として良い方向へと進んでいる。
三井情報の増田潤逸社長は、「徐々にではあるが、SIとNIの両方を生かした案件を獲得しつつある」という。ネットマークスでは、「(日本ユニシスグループでSIerの)ユニアデックスとの連携強化を進めている」としている。SIとNIの融合を具現化する製品・サービスとして、08年早々から「パワーワークプレイス」というブランド名でICT基盤構築ビジネスに着手。「ユニアデックスがSIerの切り口から、当社がNIerの切り口から提案できるため、さまざまなユーザー企業に提供できる」(大橋純社長)と自信をみせている。
また、晴れの要素としてベンダー各社が期待している分野は「UC(ユニファイドコミュニケーション)」だ。電話やメールなどビジネスコミュニケーションを統合するための製品・サービスを提供するわけだが、PBX(電話交換機)をIP-PBXに切り替えるという点では、ネットワークインフラの構築に強いベンダーが有利ということになる。そのため、力を入れ始めているNIerが出てきている。
ネットワンシステムズでは、「ユニファイドコミュニケーション事業推進本部」を昨秋から設置し、UC事業に本格着手した。IP電話機やSIPサーバーをベースに音声や映像に関する製品・サービスを提供。澤田脩社長は、「UCは、ワークスタイルを改善するといった点で注目を集めるだろう。ベンダーにとっては、ネットワークインフラのリプレースからアプリケーションまでを網羅したビジネスが展開できる」とみている。しかも、同社では「サービスが重要となる」という考えから、統合型ネットワーク運用管理サービス拠点の「XOC(エキスパートオペレーションセンター)」を開設。同センターではUCの運用管理も手がける予定だ。
さらに、「仮想化」がネットワークビジネスの拡大につながるとの見方もある。ネットワールドでは、「他社に先行して仮想化関連のビジネスに着手していたことから、主導権を握れる可能性がある」(塩田侯造社長)と鼻息を荒くする。
エス・アンド・アイでは、「ノウハウを生かし、サーバーだけでなくストレージやネットワークの分野でも仮想化に取り組んでいく」(松本充司社長)という。マクニカネットワークスでは、「他社が扱っていない仮想化製品を国内市場に投入する」(宮袋正啓社長)ことを明らかにしている。
こうしてみると、ベンダー各社はビジネスモデルの変革や新技術への対応で“晴れ”を作り出しているといえよう。ハードウェアの低価格化が依然として進んでいることを勘案すれば、雲行きが怪しくなる兆候も潜んでいるわけだ。既存のビジネスモデルにしがみつけば、“どしゃ降り”の危険性も秘めている。

UCや仮想化などをテーマにネットワーク機器や関連製品の提供が拡大する可能性が高い。ネットワークインフラの構築だけでなく、アプリケーションまでを網羅した製品・サービスを提供することになるため、大きなビジネスにつながりそうだ。通信事業者を対象としたビジネスでは、NGNで大型案件も獲得できるケースも。
ネットワーク関連案件を、いかに掘り起こせるか。ブレードサーバーの販売に強いSIerとの連携を深めてサーバー統合から仮想化につなげるといった提案が必要となる。ネットワークインフラのリプレース需要を確保することがカギを握るといえる。リプレース案件は、SMB(中堅・中小企業)が狙い目との見方もある。
ハードウェアを中心としたネットワーク機器の販売だけに固執しては確実に業績不振となる。L2/L3スイッチを中心に価格下落の影響が依然として続いているため。L4-7の販売とアプリケーションを含めた提案など、ネットワーク機器の販売でも新しい切り口のビジネスを手がけていかなければならない。

●4月に旧ネクストコムと旧三井情報開発が合併。新しく誕生した三井情報は、SIとNIの融合ビジネスが可能なベンダーとして業界で注目を集めた。同社では、2008年度(09年3月期)から大きく飛躍するための基盤を固めている。
●日本ユニシスがネットマークスを買収した。ネットマークスは、6月からユニシスグループとしてユニアデックスなどとの連携を模索。両社の新ブランドとして「パワーワークプレイス」を発表した。
●NTTなど通信事業者がNGN(次世代ネットワーク網)を掲げ、新しいシステムの構築を進めた。一部では、「遅れている」との声も出ているが、NGNが業績拡大につながり始めたベンダーも出てきた。
●台湾や中国などの新興ネットワーク機器メーカーが勢力を伸ばした。ディーリンクジャパンは、官公庁を中心にユーザーを増やした。H3Cテクノロジージャパンは、販売代理店とのパートナーシップを深めることで攻勢をかける準備を進めた。ネットワーク機器市場は、競争が激化した。