2008年は「仮想化」と「SaaS(Software as a Service)」がビジネスの拡大に影響するキーワードとなりそうだ。週刊BCNが国内ICT・流通業界76社の経営トップから回答を得た年頭アンケート調査によると、回答者の大半が、IT投資や運用コストを削減してシステム全体を効率化する企業ニーズの高まりを受け、仮想化やSaaS、あるいはSOA(サービス指向アーキテクチャ)を駆使したシステム提案が商機をつかむうえで重要と判断しているという結果が出た。加えて、アライアンス先としてもSaaSや基幹システムのアウトソーシングなどの需要が増すことを想定し、ネットワーク環境の構築に実績のあるNIerとの連携を模索するベンダーが目立ったのも、08年の特徴といえる。地域別に注目している地区(東京・名古屋・大阪を除く)に関する質問では、07年に引き続き「九州地区」への期待が大きい。しかし、全体としては、自治体案件などの減少に伴い、「東・名・阪以外には期待していない」との回答が多く、「首都圏集中」の傾向がさらに強まりそうだ。
キーワード編
自社ビジネスを問わず、ICT・流通業界で、08年
のポイントとなるキーワードは何か? |
最も多いのは「仮想化」
「スマートフォン」に期待の声

有力ICTベンダー76社のトップが、ビジネス拡大に影響があると感じている言葉として、最も多い回答は「仮想化」だった。SIerからNIer、パッケージソフトベンダーまで幅広く票を集めた。ICTの運用コストを削減するための新技術として注目されている。「ニーズの強さは、07年の段階ですでに実感している」ようで、業界は仮想化関連ビジネスの拡大に大きな期待を寄せていることが分かる。
2位は「SaaS」。数年前から登場している言葉だが、08年もICTベンダーはSaaSを注視している。ただ、仮想化のように、直近のビジネスに影響があるとは考えていない。数年先の将来を見据えて、研究・開発の意味で、SaaSをあげるICTベンダーが多かった。以後は、3位「J─SOX法」、4位「システム統合」、5位「SOA」と続く。
上位5位までを総合的にみると、新語というよりもすでに登場してきた言葉が「継続的に」または「本格的に」キーワードになっているといった印象。08年に新たな動きが出るのではなく、07年までの流れを引き継いでいる感が強い。
そのなかでも新キーワードとして登場してきたのが、「スマートフォン」。7位にランクインした。汎用OSを搭載する携帯電話やPHSが多く登場。スマートフォン向けの業務アプリケーションやASPサービスが開発しやすくなり、ビジネスチャンスが創出できると予測しているベンダーが多い。キーワードとしてあげたベンダーは、スマートフォン向けビジネスで商材をすでに用意しており、スマートフォンがIT市場を活発化する可能性を秘めている。
一方、07年よりも期待が薄れているのが「セキュリティ」。ICTビジネスのなかで成長著しかったセキュリティ製品・サービスだが、07年はやや伸びが鈍化したの声が多かった。「J─SOX法」もセキュリティ製品・サービスの拡販には思うように結びつかなかったという。「個人情報保護法」の成立から続いた“セキュリティ特需”にかげりが見えてきた印象は強い。
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