米IBMは、1月下旬に開催した年次カンファレンス「Lotusphere 2008」で、ロータスソフトウェア事業の戦略を次々と発表した。同社が追求しているのは、ウェブ2.0時代での法人向けアプリケーション提供のあり方。この連載では、カンファレンスを通じて明らかになった新製品やサービスを踏まえ、ロータス事業の方向性を探っていく。

今回のカンファレンスは、テーマが“Emergence”。日本語に直訳すれば「出現」だが、生物学や物理学でいえば「創発」と解釈できる。局所的な相互作用を持ち、自律的な要素が多く集まることにより、全体を合わせたものとは質的に異なる高度で複雑な秩序やシステムが発生し、予測や意図、計画を超えた構造変化や創造が誘発されるという意味だ。カンファレンスで発表されたロータスの製品・サービスは、まさに「出現」と「創発」を物語っているようだった。
IBMがロータス事業で力を入れているのは、ウェブ2.0をはじめ、マッシュアップやSNS、UCC(ユニファイド・コミュニケーション・アンド・コラボレーション)などの領域だ。個人ユーザーが利用する製品やサービスは法人市場でも「出現」している。ユーザー企業は業務を遂行するうえでインターネット活用の情報収集を行うほか、SNSやUCCなどのサービスを組み合わせるといった「創発」に取り組んでいる。ロータスソフトウェア総責任者のマイク・ローディン・ゼネラルマネージャーは、「法人市場では、当社が提供しようとしている製品やサービスの導入ニーズが出始めている」とアピール。これをロータス製品が実現するという。
IBMでは、以前から革新的な製品ロードマップを発表していた。今回のカンファレンスで具現化した製品やサービスを披露したのだ。具体的には、オフィスソフトで「ロータス・ノーツ/ドミノ」をモバイルやウェブ2.0に対応するほか、統合スイート「シンフォニー」でマイクロソフトなど競合との連携を追求。ほかにも、UCC分野の「ロータス・セータイム」で電話機能を強化し、SNS対応の「ロータス・コネクション」で新バージョンの提供、マッシュアップが可能な「ロータス・マッシュアップ」の市場投入などを計画している。
また、ローディン・ゼネラルマネージャーは「次世代コラボレーションの時代に突入している。そのため、当社は適したソリューションを提供していかなければならない」とも語る。「全くつながりのなかった人に意見をもらえるようになるなど、新しいコラボレーション形態が出ている。そこで、ナレッジマネジメントやサーチといった機能が必要となる。マッシュアップもしなければならない」と強調した。こうしたコラボレーションを生かしてユーザー企業が収益を上げていくことを期待している。(佐相彰彦●取材/文)