HD-PLCの普及なるか!?
国内外のメーカーが参加
パナソニックコミュニケーションズは、PLC(電力線通信)の高速規格「HD-PLC(高速電力線通信)」を採用した製品間での通信互換性を向上させるため、本社(福岡市博多区)敷地内に検証ハウスを設置した。家庭での使用に近い環境の構築で利便性を追求。HD-PLCの普及に向け、家電やITに関連する国内外のメーカーが多く参加している。(佐相彰彦●取材/文)
■1軒で2種類の配線を併設 同一条件下での試験が可能に パナソニックコミュニケーションズは、HD-PLCの普及団体「HD-PLCアライアンス」の参加メンバーとして検証ハウスを建設した。検証ハウス内には同社をはじめ、HD-PLC採用の製品を開発する国内外のメーカーが、すでに発売している製品や市場投入を検討している製品を使って通信互換性の検証を行っている。パナソニック製PLCアダプタを中心に、パソコン、テレビや録画機器などAV(音響・映像)機器、電話機やFAX、冷蔵庫、電子レンジなど一般家電製品を備えており、実際にユーザーが生活できることを想定した作りに仕上げている。
特徴的なのは、住宅環境により近づけて検証するために1軒で2種類の配線を構築していることだ。新築戸建や大規模マンションでは、「スター型」と呼ばれる中心機器を介して電力を送る“ユニット配線”の形態が多くなっている。一方、既存戸建や小規模マンション、アパートでは「スター型」の配線に中心機器を介さない「送り配線」併用の構造。HD-PLC関連機器をユーザーが使う際は、基本的に“ユニット配線”が適しているといわれているものの、日本の住宅は「送り配線」のケースも多い。検証ハウスでは、両配線の併設で切り替えて評価が可能。同一条件下で検証できるため、メーカーにとっては各配線に適した製品開発に役立つというわけだ。
検証ハウス内では、各製品がつながる利便性を追求。PLCがあれば、LAN配線がないキッチンや居間でもパソコンが使えるほか、玄関カメラ付きドアフォンやテレビがPLCと連携することでドアフォンを鳴らす訪問客をテレビでホップアップ表示できるという試験を実施している。
検証ハウス設立の理由について、パナソニックコミュニケーションズPLC標準化・アライアンス推進室長でHD-PLCアライアンス会長を務める小林英次氏は、「製品間での連携によるHD-PLCの広がりといった、(HD-PLCアライアンスを中心に)われわれが達成したいことを具現化するため」と説明する。検証のため、あえて家を想定して設置したのは、「使うイメージを実体化することで、製品を提供したメーカーをはじめ見学者による新しいアイデアの創造につなげる」ことが目的。実際、見学者のなかには「すでに発売している製品、開発中の製品でメリットや課題を見い出すケースがある」という。
■世帯普及率は10%未満 他業種との連携も目指す 日本では、PLC関連機器が浸透しているとは言いがたい。世帯普及率については、「10%未満ではないか」とみており、まだまだ低いことを認めている。広めていく点では、検証ハウス設置の必要性があったようだ。
また、検証ハウスのようなモデルルーム的な存在は、ほかの業種から採用の引き合いが出てくるといえそうだ。今回のケースでは、建設業界からの問い合わせがくる可能性を秘めている。小林氏は、「今後も、多くの製品で通信接続性を検証していきたい」意向を示す。実際、検証ハウスでは、台湾の某メーカーが開発したHD-PLCを採用したPOSレジが展示してあった。
デジタル機器がつながることは、個人だけでなく企業にとってもメリットが大きいといえよう。PLC関連機器が普及していないため、まだまだ課題が多いが「オープン性をアピールする」としているHD-PLCアライアンスの取り組みは、デジタル機器のユーザーにとっては大きな意味合いがある。
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| HD-PLC | 電力線を通信回線として利用する技術の1つで、高速でネットワークを流すことが可能な規格。電気コンセントにPLCアダプタを差し込めば、パソコンなどでインターネットの閲覧やメールの送受信が可能となる。ほとんどの建物に電気配線が張り巡らされているため、PLCを使うことにより新しくケーブルなどを敷設することなく構内通信網を構築できることが特徴だ。 電力線は、もともと高い周波数の電気信号を流すことを想定して |  | いないため、PLCによる漏えい電波がアマチュア無線などに深刻な影響を与えるとの指摘もあった。総務省が規制を緩和したことで、国内での利用が可能となった。2006年12月には、松下電器産業がPLCアダプタを市場投入した。 昨年9月には普及団体「HD-PLCアライアンス」が設立された。同団体には10社以上が参加しており、製品間の通信互換性に力を注いでいる。 | | | |