問われるシステム提案力
最近になって、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)が再認識され始めている。BPMとは、PDCA(プラン・ドゥー・チェック・アクション)というマネジメント・サイクルに適応し、継続的なプロセス改善を遂行するキーコンセプト。その具体策として「業務効率化」や「攻めの経営」があり、ITはあくまでその1局面で導入・使用するツールに過ぎない。ITベンダーに求められるのは、経営上のコンサルティングを含めたITシステム提案なのだ。
しかし、ここにきてIT業界で「BPMありき」のシステムを提案しなければならないと再認識されているのは、少し矛盾しているとはいえないか。そもそもIT化はユーザー企業の業務改善を行うためのものだ。プロセスを考えずにIT化を図れば当然、支障をきたすことになるだろう。それが、日本でよく見受けられる「複雑怪奇な情報システム=「スパゲッティ構造」」というわけだ。ITベンダーは、この複雑化したシステム構造の修復やリプレースをせっせと行っているのが実状だ。
だからといって、ベンダーサイドだけが悪いとはいえないだろう。ユーザー企業に対して「なぜIT化を図ったのか?」と問うと、多くは「ベンダーが導入を促したから」と答える。「ベンダーの言いなりになってシステムを導入してしまった」と弁解するユーザーの大半は、成長戦略を立てたうえでIT投資を行ったわけではなさそうだ。
ベンダーにとって、こうした現状を見過ごすわけにいかないだろう。BPMのコンサルティング力がないからといって、指をくわえている場合ではないのだ。このような状況だからこそ、きちんとユーザー企業と向き合って、その企業のBPMの改善を目指し、それと一貫したIT化を提案する。これが競合他社との差別化につながるはずだ。
こうしたビジネスを手がける立場の一例としては、ITコーディネータ(ITC)が挙げられる。マネジメントコンサルタンツの小林勇治・流通システム担当代表取締役は、大きな危機に直面した企業の立て直しに定評あるITCの一人として、「ITシステムの導入がメインではない。あくまでも経営革新を行うためのツールとしてITシステムがある」という考えをもつ。そのため、じっくりと時間をかけてユーザー企業の現状を分析した後で、経営改革の計画を立案する。また、ユーザーのレベルアップに合わせてITシステムを導入してゆく。その独自理論である「ミーコッシュ」は、ユーザースキルをバランスよく成長させることの必要性を説いている。四国でITCとして活躍する長尾和彦氏も、経営革新をコンセプトにITを提供している。「IT化だけに力を注いでもユーザー企業のためにはならない。ユーザー企業に合わせた導入が望ましい」と、同様の主張を展開する。
ただ、この作業は「利益が出にくい」ため、多くのITCの嘆きを耳にする。しかし、ひとたびこの提案業務を成功させれば、ユーザー企業から絶対的な信頼を得られるのも事実だ。今、システム提案のあり方が問われている。BPMベースで最適なシステムを提供し、利益を増やせるベンダーが主導権をもつ。