仮想化技術に熱い視線
マイクロソフトが4月15日に発売した新サーバーOS「Windows Server 2008」。IHVやISV、SIerの対応ぶりは前版「同 2003」に比べて圧倒的に立ち上がりが早く、対応製品・ソリューションが続々と発表されている。これらのパートナーは、新OSの何を評価し、5年ぶりの「バージョンアップ商戦」をどう戦おうとしているのか。パートナーのナマの声を集めると、そこには明確な共通点がみえてきた。(木村剛士●取材/文)
■イベント会場は新OS一色に 4月中旬に開催したプライベートイベント「the Microsoft Conference 2008」。毎年恒例の行事で、これまではマイクロソフトのさまざまな製品・サービスを紹介するのが普通だった。だが、今回はイベント初日が、新OS「Windows Server 2008」の発売日だっただけに、全体のトーンは新OS一色。イベント会場に設置した展示スペースも、各パートナーの新OSを活用した製品・ソリューションのPRが大半を占めた。
本紙4月28日号(Vol.1233)で報じた通り、マイクロソフトは前版「Windows Server 2003」以上に、発売時でのIHVやISV、SIerに対応製品・ソリューションを迅速に用意してもらうよう着々と準備を進めていた。その成果が現れ、対応ハードとソフトは前版に比べ30%増しで、認定技術者数は700人を揃える充実ぶりだ。樋口泰行社長と五十嵐光喜・業務執行役員サーバープラットフォームビジネス本部本部長は、「パートナーの“Ready”状況には満足している」と、パートナーの対応の早さをひときわ強調している。
■共通点が浮き彫りに では、その“Ready”パートナーは、新OSの何を評価しているのか。パートナーのイベント展示ブース内容と担当者の声を集めると、明確な共通点が浮かび上がる。各社が多大な期待をしているのは、仮想化技術「Hyper─V テクノロジー(Hyper─V)」にあった。
240人もの新OS認定技術者を育成した実績を引っさげて、Windowsに対する積極姿勢をみせる伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のプラットフォーム推進部サーバ技術課・杵島正和氏は、「『Windows』の信頼性が大幅に向上したとみている。(『Windows』を使ったシステムは)あくまでソリューションの1つに過ぎないが、ユーザーの要望は確実に高まっている」と説明する。そのうえで、ユーザーへの具体的な訴求機能として「Hyper─V」をあげた。「旬の技術を搭載することで敷居が格段に下がり、仮想化案件が増加する可能性がある」(杵島氏)。
CTCを主要販社とし、OSベンダーとしては競合するサン・マイクロシステムズの的場謙一郎・マーケティング統括本部専任部長も、「省スペースや消費電力の問題解決のために仮想化技術は必須。『Hyper─V』には仮想化市場の活性化を期待している」と説明する。
このほかのハードベンダーも仮想化技術に強い期待を示している。日立製作所は、人気のブレードサーバーと新OSを組み合わせたブースを展示イベントに用意。日立は仮想化技術として独自開発の「Virtage」を持ち、ヴイエムウェアの仮想化ソフトも活用している。今回、日立は新OS搭載した全モデルを「Hyper─V」に対応させることを決めた。「大規模では『Virtage』を使い、中規模向けではヴイエムウェアと『Hyper─V』をユーザーの要望に合わせて提供する」(飯田靖・事業企画本部企画部主任技師)体制を整える。
富士通は、「Hyper─V」適用を支援する専門設備・チーム「富士通 Hyper─V 仮想化センター」を組織した。自社IAサーバーと仮想化技術を組み合わせた仮想化ソリューションの提案を活発化させる考えだ。
パートナーの声を集約すると、仮想化という旬の技術を載せたことが今回のパートナーの対応状況を早めた理由の1つであることは間違いない。マイクロソフトも新OSの特徴として仮想化技術を前面に押し出していたが、それはパートナーにも通じている。積極果敢にパートナーが仮想化技術を売り物にシステム提案するとなれば、仮想化環境は一気に広まる可能性がある。新OSの売れ行きは、システムの仮想化環境の広まりにも影響を与えそうだ。
店頭チャネルも有効活用
家電量販店でデモを開催
「Windows Server 2008」の発売週には、「the Microsoft Conference 2008」の開催だけでなく、家電量販店でもPR施策を展開していた。新OSのメリットを紹介するイベントを、東京都内の有力店舗、ビックカメラ有楽町店本館とヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店でも同様のイベントを開催した。
個人事業主や数人規模の零細企業は、家電量販店でビジネス向けソフトを購入するケースがある。それだけに、店頭チャネルでも仕掛けを用意したわけだ。
発売週の最初の金曜日である4月18日夕方、ビックカメラ有楽町店本館の4階ソフトコーナーでは勤め帰りのサラリーマンなど数十人が集まった。
森屋幸英・Windows Server製品部エグゼクティブプロダクトマネージャがデモンストレーションを交えて主要なメリットを紹介。もっとも時間をかけて紹介していたのは、「Hyper─V テクノロジー」だった。
ソフト販売を担当するビックカメラ有楽町店本館の吉岡智洋氏は、「予想以上の成果があったと感じている」とビジネス向けソフトのイベントでも効果があることを実感している。また、「お客様には、仮想化技術を中心にPR展開し拡販を図りたい」と語った。