米フロリダ州オーランドで開催された、統合システム管理のTivoliソフトウェアを中心としたカンファレンス「Pulse2008」で、米IBMは新しいサービスマネジメントの概念を発表した。訴えたかったのは、ビジネスの“CHANGE”。ユーザー企業に対してトータルマネジメントが可能なシステムを導入することの重要性を説き、メーカーやSIerなどITベンダー側もビジネスを変えていかなければならないとしている。この連載では、IBMのユーザーや販売パートナーのビジネス革新を探る。(佐相彰彦●取材/文)

「当社がビジネスを革新しなくても他社は行うだろう。すでに進めている競合もあるのではないか」。スイス・リインシュアランスのクリストフ・ロハーCTOは、そう危機感を募らせる。
同社は、1863年に設立された再保険会社。30か国以上で展開する世界でも屈指の再保険会社だ。そんな同社がサービスマネジメントの導入で抜本的なビジネス改善を決意したのは、業界で熾烈な競争が繰り広げられているからにほかならない。
「エンド・トゥー・エンドの変化に対応したマネジメントを行いたい」。同社では、このようなマネジメントを“Change Management”と表現している。IBM製品の採用でサービスマネジメントの導入に踏み切った。

同社が大規模なシステム導入のプロジェクトを始動させたのは2005年からという。07年までの約3年間をかけて、顧客から収集してきた問い合わせや浮上した問題などを管理し、それを顧客との接点であるサービスデスクで生かせるシステムを構築している。また、顧客へのサービス拡充にも活用できるように作業を進めている。そのため、さまざまな管理プロセスの統合に向けてTivoliなどを導入したわけだ。
リインシュアランスがIBMの顧客になったのは、古くから設備管理ソフト「Maximo」を導入していたためだ。IBMのMaximo買収によりつき合いが始まったのだ。「(買収後に)きちんとIBMがサポートしてくれるかどうかが気がかりだった」と振り返る。しかし、現在では「全幅の信頼を寄せている」そうだ。「(IBMは)当社のビジネスを成長させるためのサポートをしっかりと行ってくれる。顧客とメーカーの関係というよりはパートナーシップを組んでいるようなもの」としている。実は、ロハーCTOはITシステムやネットワークインフラといった技術面について、「(CTOというほどの)ノウハウを持っているわけではない」と本音を漏らす。あくまでも、本流のビジネス拡大のためのシステム構成を考える立場だからのようだ。
「抜本的なシステム導入には、自分がどこに進もうとしているのかを決める必要がある」と、ロハーCTOは強調する。同社のシステム構築プロジェクトは道半ば。「現段階で完成形ではないため、これからも積極的に進めていく」方針を示す。