ブレードサーバー市場が広がりそうだ。ブレードサーバーはタワーやラック型に比べて価格が高く、導入・運用の際に専門知識も必要。そのためIT投資資金や情報システム運用ノウハウが豊富な大企業が利用するケースが大半だった。しかし、今春に入ってその状況は変わりつつある。 ブレード市場トップの日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が、既存商品の価格を下げたほか、5月中旬には8万円台で購入できる業界最安値モデルを市場投入。その動きに煽られてか、値下げ検討を口にするメーカーも出てきた。価格障壁は従来に比べ格段に下がりそうだ。旬の商材と言われながら、市場が限定的だったブレードが、一気に中小企業へ普及する可能性が出てきた。
中小企業に一気に広がる可能性も

ブレードサーバー市場シェア1位の日本HPは5月中旬、再エントリーモデルとして最小構成価格8万9250円の新商品を投入した。ブレードサーバーはこれまで中堅・大規模システムでの利用が大半だったが、小規模システムでも採用されることを狙った戦略商品の登場だ。従来の最安価モデルに比べて初期導入コストを40%ほど削減できるという。さらに5月下旬、ブレードを格納する「エンクロージャ」とよぶ装置の価格を約10%値下げするなど、関連製品の価格改定を発表。価格訴求を前面に打ち出した。
ユーザー企業がブレードを検討・導入する際、「足かせ要因としてもっとも大きな要素は価格の高さにある」(宮本義敬・ISSビジネス本部ビジネスプランニング部)。日本HPが調査会社IDC Japanのデータをもとに示したデータによると、30万円以下のx86系サーバーのうちブレードが占める割合は、全体の0.1%にしか達していない。
日本HPは中堅・大規模システムでシェアを獲得し一気にトップに上り詰めたが、「獲得シェアの目標数値は現在よりも約15ポイント増の50%」(ISSビジネス本部プロダクトマーケティング部の木村剛氏)。挑戦的な数字をぶち上げている。それだけに次の進出先として30万円以下の市場に照準を合わせたわけだ。中小の市場開拓に本腰を入れるための価格と製品を用意し、中堅・中小企業の情報システムと、ITがビジネス展開における重要なインフラとなっている新興のネットサービス企業をメインターゲットに、本格拡販を図る意向だ。
日本HPの有力パートナー、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、2002年からブレードを活用したシステム提案を開始したが、「ここ1-2年前から中堅企業以下で検討するユーザーが増えている」(中川裕路・ITエンジニアリング室プラットフォーム推進部部長)という。実際、日本HPの大規模向けブレード「C-7000」と中規模向けの「C-3000」の販売比率はそれぞれ50%ずつで、「C-3000」が急成長を遂げている。ユーザー企業へ実際にシステムを売るSIerも、中堅企業以下の市場でブレードが売れ始めていることを実感しているわけだ。
競合の動きはどうか。あるサーバーメーカーは「ブレードサーバー市場で生き残るためには、値下げを検討せざるを得ない」と、日本HPの低価格戦略にため息を漏らしながらも追随を示唆するコメントを述べている。
日本HPと熾烈なトップ争いを繰り広げるNECは、価格については明言を避けるが、「中堅・中小企業をメイン顧客に据える販売パートナーのスキルが上がってきた。販売店の組織力はNECの強みだけに、パートナーへの支援をもっと強めて中堅・中小市場に切り込む」(本永実・クライアントサーバ販売推進本部グループマネージャー)と説明。やはり、中堅以下に照準を当て始めている。
調査会社ノークリサーチの伊嶋謙二社長は、「x86系サーバー全体は今年度(09年3月期)は台数、金額ともにどれほど伸びるか読みきれない。ただ、ブレードは昨年度比で二桁成長することは間違いないとみており、控えめにみても、x86系サーバー全体の10%を占める」と断言、成長を疑っていない。市場が限定的だったブレードサーバーが日本HPの戦略を契機として一気に中小システムへ普及し、市場が広がる可能性が出てきた。