その他
JISAが示す景気動向 「悪くなる」の覚悟必要
2008/06/16 14:53
週刊BCN 2008年06月16日vol.1239掲載
情報サービス産業協会(JISA)の浜口友一会長(NTTデータ取締役相談役)は、今期(2009年3月期)のビジネス環境について「悪くなると思っていたほうがいい」という見解を示した。国内景気全体の失速感が強まるなか、「IT業界は半年ほど遅れて影響が出る可能性がある」と警戒感を強める。大手SIerの経営幹部からも、「今期の業績予測は難しい」という声が聞かれる。原油・原材料高やサブプライムローン問題の後遺症など不安要因が多く、受注環境の見通しが立ちにくくなっている。(安藤章司●取材/文)
下期に影響顕在化か!?
内需依存で危うさ増す
■主要顧客業種でDI値が減少
昨年度(08年3月期)を見る限り、受注残を増やした大手SIerは多い。しかし、オープンシステム化やパッケージの活用が進行。一つひとつのプロジェクト規模がメインフレーム全盛期に比べて小さくなっている。大型の案件をひとつ受注すれば“数年間は安泰”という時代ではなく、IT投資が冷え込むと「すぐに影響が出てくる」(西條温JISA副会長=住商情報システム会長)というシビアな状況だ。IT業界を潤してきたメガバンクの基幹システムの統合案件も今期で終息。「大型システム案件の先細り」(NTTデータの山下徹社長)を危惧する指摘もある。
金融・保険業や製造業といった情報サービス産業の主要取引先業種の景況感にも陰りが見える。経済産業省の特定サービス産業動態統計で、今年4-6月期の景況感の見通しを示すDI値が金融・保険業で前年同期の36.6ポイントから12.7ポイントに減少。製造業でも同30.5ポイントから15.2ポイントに減った。伸び悩みが目立ち始めてから、「半年ほど遅れて影響が出る」(浜口JISA会長)と、IT業界におけるビジネスの経験則を語る。早ければ今期下期から主要SIerの業績面に数字として現れる可能性もある。
情報サービス産業は下期に受注や売り上げが偏る傾向が強い。翌期以降に売り上げが先送りになる現象が起これば、「業績への影響は避けられない」と見る大手SIer幹部もいる。
■海外進出、大手が範を示せ
では、どうすればいいのか。いくつか手はある。国内需要だけに依存していては、どうしても内需変動に直接的な影響を受けてしまう。大手SIerは海外市場への進出を加速。内需依存度の比率低減を進める。NTTデータはドイツの中堅SIerをグループ化するなどし、野村総合研究所(NRI)は「アジアにもうひとつのNRIをつくる」(藤沼彰久会長兼社長)という方針を打ち出す。
大手は海外での受注獲得を前提に多額の投資を行う体力があるが、中堅・中小のSIerはそうはいかない。とはいえ、アジア地域の開発リソースの効率的な活用や既存のパッケージソフトの活用、SaaSをはじめとするサービス型ビジネスへの移行といったコスト削減は可能だ。大手のように海外で売り上げを伸ばすことは難しくても、コストを下げて利益を優先する方策もある。競争力を高めれば、例えば、大手SIerが海外から獲ってきた仕事を受注する道も開ける。
一方、インドの有力SIerが伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)や日本ユニシスなど大手ITベンダーと連携強化している。高度な技術や品質を要求される日本のSIerとは「仕事内容が違う」(神山茂・JISA副会長=ジャステック社長)と捉え、一概に脅威ではないという見方もある。だが、中国などアジア新興国の需要は「技術的に高度なものではなく、そこそこの品質で、価格の安いシステムにある」(浜口JISA会長)とみられる。インドでスズキの低価格自動車が売れているのと同じ構図だ。日本の割高な携帯電話端末が国外で売れなかったケースとも共通項がある。
国内に特化したビジネスを追求しすぎると、いずれ先細りになる。景況感が鈍る局面ではなおさらだ。JISAのメンバーは約730社。その多くを中堅・中小のSIerが占める。投資体力で勝る大手が範を示し、景気変動に強い情報サービス産業を再構築することが強く求められる。
情報サービス産業協会(JISA)の浜口友一会長(NTTデータ取締役相談役)は、今期(2009年3月期)のビジネス環境について「悪くなると思っていたほうがいい」という見解を示した。国内景気全体の失速感が強まるなか、「IT業界は半年ほど遅れて影響が出る可能性がある」と警戒感を強める。大手SIerの経営幹部からも、「今期の業績予測は難しい」という声が聞かれる。原油・原材料高やサブプライムローン問題の後遺症など不安要因が多く、受注環境の見通しが立ちにくくなっている。(安藤章司●取材/文)
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