サーバー統合化の波が後押し
メーカーは代理店の確保へ
「サーバー統合」の波が押し寄せるなか、WAN(ワイド・エリア・ネットワーク)高速化機器の導入ニーズがユーザー企業の間で高まっているようだ。こうしたニーズを取り込もうと、メーカー各社は製品の機能面を強化、またユーザー企業の拠点がある地域でSIerを販売代理店として確保することに躍起になっている。(佐相彰彦●取材/文)
■拠点サーバーの集約を強化 WANアプライアンスの投入へ WANがフォーカスされているのは、企業の本社やデータセンターなどにサーバーを集約する「サーバー統合化」が一段と進行しているため。サーバーメーカー各社がブレード型の拡販に力を入れたことが統合化に寄与している。ユーザー企業はネットワークインフラとしてWANを構築。しかし、WANの最大の課題はアクセスの遅延だ。いくらサーバー統合化によるコスト削減や業務効率化を図ったとしても、データにアクセスするための時間がかかり、拠点ベースで業務に支障をきたすのでは意味がない。そこで、WAN高速化機器が注目を集めているわけだ。
ただ、WAN高速化機器メーカーは、単にWAN内でのデータアクセスを最適化するというキャッチフレーズだけでは競合との差別化につながらないと判断している。そのため、メーカー各社は、抜本的な機能強化に踏み出しているという事情がある。
リバーベッドテクノロジーは、ネットワークセキュリティ関連メーカーのInfobloxと協業。リバーベッドのWAN高速化機器に、InfobloxのDNS(ホスト名とIPアドレスを対応させるシステム)やDHCP(IPアドレスの自動割当)などの機能を搭載し、アプライアンスで提供することにした。
協業した理由は、「サーバー統合が進んでいるとはいえ、どうしても拠点にサーバーを置かなければならない状況になっている」(リバーベッドの遠井雅和社長)ことにある。これまでのWAN高速化機器はネットワークがダウンした際にDNSやDHCPなどアクセスのコアになる部分に関しては未対応だった。ユーザー企業は、DNS/DHCPサーバーだけは拠点に設置して管理していたわけだ。サーバー統合化が進むなか、特定分野に関してのみサーバーを分散化し、IT管理者を配置してシステム管理を行わなければならないという手間やコストがユーザー企業のなかで生じている。「サーバー統合によって本社で徹底的に一元管理できる環境を構築する」と、遠井社長は訴えている。
ブルーコートシステムズは、このほどパケッティアの買収を完了。ブルーコートのWAN高速化製品とパケッティアの帯域制御管理製品の互換性を追求していく。製品連携によるWAN関連ソリューションのパッケージ化で事業領域の拡大を図る方針だ。
■地場SIerとパートナーシップ 通信事業者向けビジネス拡大も  |
| WAN(Wide Area Network) | | 「広域通信網」という意味。電話回線や専用線を使って、本社や支社間など地理的に離れた地点にあるコンピュータ同士を接続し、データをやり取りすることをいう。しかし、課題なのはアクセスが遅いこと。そのため、リバーベッドテクノロジーをはじめ、各メーカーがWAN高速化機器を市場投入。アクセス速度が上がる製品として注目を集めた。最近では、単にスピードを追求するだけでなく、システム統合による業務効率化などに、ユーザー企業のニーズはシフトしている。 | | | |
こうした製品強化を図るのにともない、メーカー各社が力を入れ始めたのは販売代理店の拡充だ。なかでも、地場の有力SIerを販売代理店として確保することを狙っている。
というのも、メーカーにとってはWAN関連のソリューション案件が増えた場合、ユーザー企業の各拠点に対するサポートを強固なものにしたいという考えがあるからだ。リバーベッドでは、「当面は、首都圏や全国網でビジネス展開する販売代理店とのパートナーシップを深めていく。Infobloxとの協業による製品の拡販が成功すれば、各地域で販売代理店を確保し、成功事例を生かしてWAN構築をさらに進めていく」(遠井社長)としている。
また、販売代理店の確保にともなってWANのユーザーとして獲得したい業界は通信関連。最近では、NTTグループのNGN(次世代ネットワーク網)に代表されるように、サービスプロバイダ(SP)によるネットワークインフラの強化が進んでいる。しかし、課題なのは地方でのビジネス展開だ。インフラ整備が万全でない地域に関しては基地局を設置するよりもWANを構築したほうがコストを低減できるといわれている。そこで、SPはWANを構築することによる地域の囲い込みを視野に入れているようだ。
ADN(アプリケーション・デリバリ・ネットワーキング)分野でトップシェアを維持するF5ネットワークスでは、「通信事業者向けビジネスの拡大を図る」(長崎忠雄社長)という号令のもと、その一環として地場SIerへのアプローチを強化。パートナーシップを深め、WAN関連製品「WANJet」の拡販にもつなげる方針だ。
ニーズの高まりとともに再び注目を集めることになったWAN。メーカー各社が機能面の強化に力を注ぎ始めたことからも、SIerやNIerにとってはビジネスチャンスが広がる可能性を秘めている。