その他
ITベンチャー投資 新しい局面に差しかかる
2008/09/01 14:53
週刊BCN 2008年09月01日vol.1249掲載
インターネット系ベンチャー投資が新しいフェーズに差しかかっている。従来のソフトウェアやコンテンツの、さらに上位に位置する「文化やアイデア」の領域まで、投資のターゲットに入りつつある。IT産業はオープン化・標準化によって飛躍的な発展を遂げてきたが、「文化やアイデア」の領域は手つかずのまま。近年のユーザー参加型メディア(CGM)など新たなネット文化の隆盛によって“未開拓領域”が、にわかに脚光を浴びている。(安藤章司●取材/文)
「文化・アイデア」をターゲットに
■クローズ領域をオープンに
ネットベンチャー隆盛期は、ソフトウェアやコンテンツのオープン化が叫ばれ、オープンソースソフト(OSS)も、この10年で大きく発展した。また、Google、YouTubeの台頭、SNS、Wiki(ウィキ)などWeb2.0のコンセプトなど、オープン化や標準化はコンテンツ領域まで一気に進んできた。
そこで新たな投資対象に浮上してきたのが、より上位に位置する「文化やアイデア」のレイヤである。文化やアイデアのクリエーター、消費者であるユーザーを巻き込んだCGMなどの創造活動の仕組みにビジネスチャンスを見いだそうとしている。
ソフトがOSSに、コンテンツがブログやSNSでオープン化してきたのに対して、文化やアイデアは非常にクローズな世界である。ITベンチャー投資を手がけるデジタルガレージの伊藤穰一取締役は、「この部分をオープン化できれば、新しい価値の創造につながる」と考えるひとりだ。ngi groupの小池聡社長CEOは、「仮想空間のオープン化、標準化が次世代インターネットのカギ」と、ネットビジネスの振興には、より踏み込んだオープン化・標準化が欠かせないと指摘する。
伊藤氏のアプローチは、クリエイティブ・コモンズ(CC)だ。文化保護を目的に、各国で厳しい規制がかけられている著作権の一部をユーザーに開放する運動を展開する。CCに基づくライセンスは欧米で急速な広がりを見せており、国内でもニフティやNTTレゾナントなどの動画投稿サイトでCCライセンスを採用。国内最大手のニコニコ動画でもCCの考え方に沿った独自のライセンス体系を8月15日から適用開始した。
CCの創設者は、スタンフォード大学の法律学者・ローレンス・レッシグ教授だが、伊藤氏は自ら世界47の国に展開するクリエイティブ・コモンズのCEOを務める。CCが成功すれば、「文化と密接に関わってくる政治や人権、社会にも大きな影響を与えることになり、大きなビジネスチャンスが芽生える可能性がある」と、オープン化の最先端を行くことで虎視眈々と次世代ネットビジネスの可能性を追う。小池氏も、次世代3Dインターネットの標準化をすすめているコミュニティに、関連会社の技術者をコアメンバーとして送り込む。
■手つかずの荒野を開拓せよ
日本のITベンチャーは、もともとインターネットのインフラ系に弱いと言われてきた。投資家側でも、つい最近まで「インターネットって一時の流行じゃないか」(伊藤氏)と半ば本気で語られ、「3Dインターネットも日本では“ゲームの延長”くらいにしか考えられていない」(小池氏)側面がある。インフラ系では、すでにオープン化が進んでおり、日本のベンチャーは出遅れた感が否めないが、より上位のレイヤは“未開拓領域”であり、荒野が広がっている。世界進出するネットベンチャーが少ないと言われる日本にとって“これが最後のチャンスになる”という見方もある。
ベンチャー投資は向こう2-3年の動向を見据えて先行的な投資を行うものだ。砕けた表現をすれば“カネの臭いに敏感”でなければ成り立たない。SIerなど既存のITベンダーにとってオープン化が他人事ではなかったように、ネット上で起こっている、より踏み込んだオープン化は刮目に値するビジネス動向である。
インターネット系ベンチャー投資が新しいフェーズに差しかかっている。従来のソフトウェアやコンテンツの、さらに上位に位置する「文化やアイデア」の領域まで、投資のターゲットに入りつつある。IT産業はオープン化・標準化によって飛躍的な発展を遂げてきたが、「文化やアイデア」の領域は手つかずのまま。近年のユーザー参加型メディア(CGM)など新たなネット文化の隆盛によって“未開拓領域”が、にわかに脚光を浴びている。(安藤章司●取材/文)
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