受注減でSE稼働率の維持が課題
SIer最大手のNTTデータは、中間期(2008年4-9月期)辛うじて期初計画を達成した。今期で収束するメガバンクの基幹システム統合案件や、上期に業績が大幅に悪化した証券業の分野の仕事がもともと少なかったことが業績の下振れのリスクを軽減。結果的に減収要因の回避につながった。また、携帯電話市場の縮小で逆風が吹き荒れるなか、組み込みソフトで強みを発揮するコアは、NGN(次世代ネットワーク)や自動車制御・車載システムなどを伸ばしてカバーした。中堅SIerのTDCソフトウェアエンジニアリングは、受注減でSE・プログラマの稼働率が悪化。営業減益になったものの、売上高は前年同期並みを堅持した。
NTTデータ
増収増益、期初計画を達成
子会社の売り上げ増が貢献 NTTデータの中間期連結売上高は、前年同期比10.1%増の5133億円、営業利益は同18.8%増の446億円と期初計画を上回った。ただ、事業環境は急速に悪化している。IT投資動向の今後の見通しについて、金融分野を“微増”から“微減”へ、産業分野を“減の可能性”へそれぞれ修正。金融のうち大手証券は業績悪化から新規投資は当面見込めない状況とし、産業分野も製造業で原材料価格の高止まりや世界経済の混乱で「微減または減の可能性がある」(榎本隆副社長)と話す。グローバルサプライチェーン管理など競争力強化の投資は期待できるものの、全体的にみれば厳しさが増す見通しだ。

売り上げ増の内訳をみると、グループ会社の貢献が大きい。中間期では単体の売り上げ増が前年同期比162億円であったのに対し、グループ会社分は同309億円も伸びた。08年1月にグループ化したドイツのSIer・アイテリジェンスが150-160億円ほどの増収効果をあげたのに加えて、07年5月にグループ化したNTTデータジェトロニクス、08年4月のNTTデータCCSが50億円ほど貢献。グループ会社の自然増に加えて、こうしたM&Aによる増収効果が上期で297億円ほどあった。
事業環境が悪化するなかでもM&Aには積極的に取り組む。この10月にはドイツBMWの情報システム子会社サークエントをグループ化し、来年1月には日本総研ソリューションズ(JSOL)に出資し、連結子会社化する予定。すでにグループ化した独アイテリジェンスはERPのSAPのシステム構築に強く、JSOLも同様にERPに強い。サークエントはBMWの世界的な自動車製造のノウハウを持っており、この分野での強みの発揮が期待される。また、パナソニックモバイルコミュニケーションズと資本・業務提携し、NTTデータが60%出資する子会社NTTデータMSEを設立。組み込みソフトウェア事業の拡大を進める。
SAPや組み込みなどの強みを持つ会社を、「総合デパートに入る“専門ブティック”のように揃える」(山下徹社長)ことで、ノウハウの獲得や商圏の拡大を図り、事業環境の悪化をカバーする。中間期の受注高が前年同期比4.7%増の6413億円と堅調なことから、通期売上高は前年度比4.2%増の1兆1200億円、営業利益同9.5%増の1050億円と期初見通しを据え置く。
コア
減収増益、組み込み伸ばす
携帯をNGNや自動車でカバー 組み込みソフトは、相次ぐ携帯電話メーカーの事業撤退や縮小で厳しい環境にさらされている。こうしたなかでも、組み込みソフトで強みを発揮するコアは善戦した。中間期連結売上高は前年同期比99.2%と微減だったが、苦戦が予想された主力の組み込みソフト事業では同103.8%と微増を堅持。同事業の営業利益は同297.6%と大幅に伸ばした。金融分野の大型案件が収束したため、業務システム開発事業が減ったのが全体の売り上げ減に響いた。
ただ、国内携帯電話の市場が縮小しているのは事実で、組み込みソフト事業の内訳をみると携帯電話・通信端末分野は前年同期比98.6%と「辛うじて微減を維持している状態」(井手祥司社長)であり、NGN(次世代ネットワーク)や自動車制御・車載システムを伸ばしたことで全体としてプラスに転じた。トヨタ自動車の業績が悪化するなか、自動車関連は「下期から来年度にかけてマイナス影響が出る可能性がある」(同)と懸念する。通期見通しは、有価証券の評価損で純利益を下方修正するものの、売上高、営業・経常利益の見通しは据え置く。
TDCソフト
増収減益、SE稼働率下がる
案件縮小、分割発注が響く 中堅SIerのTDCソフトウェアエンジニアリングの中間期売上高は前年同期並みを維持したものの、営業利益は10%減だった。景気変調で顧客のシステム投資プロジェクトの延期・縮小などが相次いだことで、SE・プログラマの稼働率が悪化。利益を圧迫した。上期だけで1億5000万円ほどの案件が延期・縮小になった。最大の懸念材料だった金融分野では、保険会社からの受注に支えられ、前年同期を上回ったことが、業績へのインパクトを和らげた。
中間期の受注高は同8.2%減と減少傾向にあり、「下期から来期にかけて予断を許さない」(藤井吉文社長)状況が続く。案件の小規模化や、大手SIerが四半期ごとに区切って同社にソフト開発を発注するケースが増えていることが要因。元請け会社がプロジェクトの失敗リスクを軽減するために段階ごとに分割してユーザー企業から受注していることが影響する。モバイルやネットワークなど同社本来の強みを生かした受注拡大が欠かせない。通期見通しは据え置く。