保守最大手の決算が実証
オープン化の波は、ここへきて緩やかになった──。IT調査会社からは発表されないこの事実を、実証するようなデータがある。ここ数年続くレガシーからオープンシステムへの移行がひと段落したと感じとれる数値だ。情報源は、意外にも保守サービスベンダー最大手、NECフィールディングの今年度(2009年3月期)中間業績のなかにあった。
保守サービスとは、メーカーやSIerがユーザー企業にハードやソフト、情報システムを納入した後、運用段階に万一故障や障害が発生した際、その修理・復旧を手がけるサービス。国内のコンピュータメーカーの大半は、保守サービス専門会社を持っており、代表的なのが富士通エフサスや日立電子サービス、そしてNECフィールディングだ。NECフィールディングは、保守サービス会社として唯一の上場企業で年商は同業種最大を誇る。昨年度は2141億1900万円を売り上げた。
その同社業績データで、オープン化の進捗を確認できるのが、「PARC(パーク)」という聞き慣れないNECグループの専門指標だ。これは、NECほかそのグループ会社が販売した全ハード標準金額合計のうち、NECフィールディングに保守業務を依頼した対象ハードの総額を意味する。
一般的に保守サービス単価は、「ハード価格×○○%=保守サービス単価」という形で決まるため、ハード価格に大きく影響される。NECフィールディングのビジネスの約70%はNECグループからの仕事が占める。そのため、「PARC」はNECフィールディングの保守サービス事業の明暗を分ける重要な指標になるわけだ。
「PARC」には、メインフレーム(MF)などのレガシー系ハードと、IAサーバーなどのオープン系ハードが含まれる。同社の今年度中間業績で要注目なのは、オープン系機種の比率だ。直近3年間の数値をみると、06年度中間期が45.0%、07年度中間期が45.8%、そして08年度中間期が45.7%。オープン系機種比率が下がったのは、今年度中間期で初めての出来事だ。同社の片山徹社長は、「オープン化の流れは、ようやく底を打ったという感触だ」と、この数値を示しながら断言した。
また、「PARC」自体の数値からもオープン化の波が落ち着きつつあることが分かる。「PARC」の直近3年間の中間期データは、06年度が2兆6139億円、07年度が2兆4057億円、今年度が2兆3000億円。今年度中間期でも下がってはいるが、その落ち幅は前年同期に比べて半分の5%になった。オープン化の進展による「PARCの落ち幅は前年度比10%程度をここ数年見ていた」(片山社長)だけに半減となったインパクトは大きい。
特定ベンダーに限ったデータではあるものの、国内IAサーバー市場シェア1位のNECの保守サービス会社であり、最大手の位置づけにあるNECフィールディングが示したデータには意味がある。「オープンに移行したい、しなければならない」とユーザー企業が考えるシステムは、ほぼ移行が終わったとみることができる一つの指標になるだろう。(木村剛士●取材/文)