グループ連携、さらに加速
富士通が今、国内外問わずグループ会社との連携をこれまで以上に強めようとしている。
10月、野副州旦社長はハード開発・販売の持分法適用会社で、独シーメンスとの折半出資会社である独富士通シーメンス・コンピューターズ(FSC)を完全子会社化することを決めた。IAサーバー開発の中核的役割を担うFSCの経営権を完全に握ることで、伸び盛りのIAサーバー事業をグローバルで拡大するのが狙いだ。
「富士通の強みの一つに製販一体がある。作られたモノを売るのではなく、売れるモノをつくる体制が必要」。野副社長は本紙のインタビューに対してこう答えている。結束力を強め、相乗効果をさらに発揮させるためには、完全子会社化する必要があったとの判断。グローバル市場での成長を至上命題とする富士通にとっては、必要不可欠とみたわけだ。
連携強化の動きがみられるのは、国外だけではない。野副社長自身は重点方針としてグループ連携を強調しているわけではないが、子会社トップの声を総合的にみると、それを感じずにいられない。
まずは保守サービス会社の富士通エフサス。同社は来年度(2010年3月期)から3か年中期経営計画をスタートさせる。今年6月に就任した播磨崇社長は計画の骨子について「エフサス単独の収益だけをみても意味がない。富士通グループの成長を考え、そのなかでエフサスは何ができるか、何をすべきかを考える」と話している。04年に上場を廃止し、富士通の完全子会社になってから、人材交流や重複製品・サービスの整理など連携を強めていたが、新トップはさらにその連携度合いを強める考えだ。
一方、上場会社でソフト開発の富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)。来年度から中国市場でのビジネス拡大を検討している。そのなかでも親会社との連携が進みそうな気配だ。
富士通BSCは、富士通グループのなかでも中国進出が早く、92年に開発子会社である北京思元軟件有限公司(BCL)を北京市内に構えている。これまではオフショア開発先としての意味合いが強かったが、兼子孝夫社長はここ数年中国を営業先としても見るようになってきた。
BCLの富士通BSC以外の売上高はまだ10%にも満たないが、これを伸ばそうと考えている。「情報システムのアウトソーシングなど、ビジネスの引き合いが強まってきた。富士通は当社の中国でのノウハウを評価しており、連携することによる中国事業拡大話が出ている」と兼子社長は話している。
また、ITアウトソーシングの富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)の場合は、SaaS事業での連携が活発だ。同社はデータセンターをグループで最も多く保有する企業。そのノウハウを生かし、SaaS基盤サービス事業を始めていた。富士通も同様のサービスを今年度から開始して強化中で、この分野で「富士通との連携を強め始めた」(伊与田悠社長)。自社サービスよりも富士通を優先する方針に転換したのだ。
野副社長体制になってからグループ会社との連携がさらに顕在化してきたのは確か。グループの総合力を武器にしようとする動きが着実に加速している。(木村剛士●取材/文)