未開拓の中堅へ「攻め」

セイコーエプソン(碓井稔社長)は、2008年12月下旬から新製品となる単機能の高速モノクロレーザープリンタを発売した。プリンタ業界ではこの投入が「静かな話題」となっている。同社販売会社のエプソン販売(平野精一社長)によれば、モノクロ機による「帳票市場」への再参入は「7年ぶり」という。さらに、同社の主戦場と異なる中堅企業以上の領域を狙う製品という点でも注目を集めている。
新製品は、毎分44枚の印刷が可能な「LP─S4200シリーズ」と同38枚の「LP─S3500シリーズ」。高速印刷の機能と120万ページ・5年印刷可能な高耐久性を両立させた。なかでも大容量給紙(標準750枚/最大2400枚)で大容量連続排紙(同500枚/同1000枚)であることが特徴だ。エプソン販売の中野修義・マーケティングセンター長は「集中して連続出力する帳票システムなどに向く」と、印刷できる枚数が多いためプリンタまで印刷物を取りに行く回数が「10分に1回」から「30分に1回」になり、帳票印刷などに最適な機種と説明する。
プリンタ業界では、帳票印刷の領域で「カラー機が伸びる」と見ていた。しかし、カラー化は進まずモノクロ機の需要が高まったことなどを受け、同社は「再参入」に踏み切ったわけだ。この間、帳票市場では2003年に経営統合したコニカミノルタなどに一部領域で市場を奪われていた。
エプソン販売によれば、新製品は「中堅以上の企業を中心に売る」(中野センター長)としており、製品が新しいだけでなく中堅以上の領域に対しても「新規参入」といえる大英断だ。
同社は、既存販社に加えて、ウイングアークテクノロジーズやプリズムなどの帳票管理ソリューションを持つメーカーの製品を扱う都市部に本社を置くSIerを新たな販社ターゲットとして獲得を目指す。
同社の試算によれば、国内企業が印刷するカラー/モノクロの全ドキュメントのうち、ここ1~2年でカラー印刷比率が20%を割っているという。両シリーズの販売目標は1年間で5万台。中野センター長は「帳票印刷はプリントボリュームが大きく、低迷する用紙やトナーなどのサプライを伸ばせる」と、期待を寄せる。「再参入」までの間、多くの「失注」が販社に生じていたはずだ。帳票領域の用途提案で巻き返せるかが注目される。(谷畑良胤)