管理サーバーの販社、質追求へ
アドビシステムズのトップが交代して半年弱が経過した。「クレイグ・ティーゲル体制」では、販売代理店の「量より質を追求」する戦略が見えてきた。特に、SOA(サービス志向アーキテクチャ)ベースのドキュメントや帳票作成などの管理サーバー「LiveCycle」では、「代理店の数を増やすつもりはない」(ティーゲル代表取締役)と、既存パートナーとの絆強化でソリューション案件を増やす方針を打ち出している。

ティーゲル氏は、2008年9月に代表取締役に就任。同社の年度開始月が10月であるため、就任早々にビジネスプランを策定。今年度(09年9月期)からの戦略を立案するうえで念頭に置いたのは「幅広い業種にソリューションを提供していくこと」。さまざまなアドビ製品をユーザー企業が導入できる環境をつくるために力を注いだのが販売代理店とのパートナーシップをより深めることだ。
なかでも、製品全体を底上げするため、製品拡販を強化するのが「LiveCycle」。昨年度までは、「LiveCycle」の拡販策として掲げていたのが全業種のユーザー企業に導入を促すことに重きを置き、販売代理店を増やす傾向があった。そこで、販売代理店に対する支援策としてサポート面を重視。「各販売代理店が得意とする業種やソリューションを理解し、各販売代理店に適した支援策を講じる」戦略を打ち出す。
「シルバー」に位置する優良代理店は「LiveCycle」関連で中堅SIerで6社ある。その販売代理店が案件をより獲得しやすくするための支援策を強化した。これまで、この6社などが得意としてきた分野は教育機関や製造業、金融機関など。各販売代理店に張り付いてバックアップする営業担当者には、分野に応じたマーケティング策を徹底的に身につけさせた。その結果、「今では複数の案件が獲得できるようになった」と効果が出始めたようだ。
従来は、全販売代理店を網羅するパートナープログラムしか用意していなかった。全業種で案件を獲得することばかりに目を奪われ「どのように売ればいいのか」とパートナーから批判が挙がっていた。アドビ側でも、「自由に売ってください」と、総花的なフォローしかできていなかったことを反省する。
ティーゲル氏は「もちろん、全業種で案件を獲得するというコンセプトは変わらない。しかし、まずは業種を絞り込んで徹底的に導入事例を作る」と話す。複数の業種で多くの案件を獲得できれば、「ほかの業種に横展開できる」ようになり、「量より質を追求する」ことに繋がるだろう。(佐相彰彦)