全国へ羽ばたく地場ソフト
MFPと連携、リコー流通網に乗れ!
有力独立系ソフトウェアベンダー(ISV)などのパートナー製品と開発基盤でデジタル複合機(MFP)を連携させるリコー(近藤史朗社長)。同社の「Operius(オペリウス)認定商品」が全国のITベンダーに注目されている。現在(1月27日現在)は21社/33製品を認定。特別な開発を伴わず“手離れ”よく中堅・中小企業(SMB)向けに販売できる商材だ。同認定商品は全国のリコー販売7社や2次店を通じて販売されている。将来的にはSIerなど地場販社へもチャネル展開し、SaaS・クラウドサービスとしても有力視される。経済不況に喘ぐ地場ITベンダーにとって、期待のもてるプログラムとなりそうだ。 昨年12月16日、リコーと岡山県津山市の建設業向けソフト開発ベンダー、アサクラソフト(浅倉久雄社長)とが共同リリースした中小工務店のMFPと連携した顧客管理システム「工務店さんの玉手箱 for imagio」は、地域に密着した特化ベンダーならではのソリューションだ。
今次不況の影響を受けて住宅着工数は減少の一途だが、一方でリフォーム需要が高まっている。だが、リフォーム市場には大手住宅メーカーや建設会社が参入し、「地域密着」というだけで仕事が確保できる時代でなくなっている。そんな背景があって、アサクラソフトの顧客管理システムとリコーのMFPを開発基盤「Operius」で連携し、対話式の簡単入力で新築・建て替え、増改築などの記録蓄積やスキャナ読み込みの図面・見積書・打ち合わせ記録を顧客管理に活用できるような仕組みが誕生した。
中小工務店のオーナーは家族経営でITリテラシーに心細いものがある。そうした環境下でも「地域密着型の条件を生かし、ITを利活用できるようにして、中小工務店が小さな案件を逃さないシステムに仕上がった」(リコーの寺井利央・NS事業推進室 Operius販売計画グループリーダー)と、地域のITベンダーだからこそ“気づく”視点で連携システムができたと自信を見せる。
リコーの「Operiusパートナープログラム」は、2007年5月に立ち上がった。特化分野あるいは特化領域に強みをもつパッケージソフトを保有するISVやSIerなど開発パートナーの製品と、MFPを連携させてソリューションを構築する制度だ。パートナー数は契約種別により異なるが、全体で168社が登録している。
国内のMFPやレーザープリンタ市場はここ2年、業界の予想に比べ成長が鈍化。国内はカラー機が0.2~1.8%増、モノクロ機が1.1~2.5%減と厳しい状況だ(ビジネス機械・情報システム産業協会調査)。紙文書の出力を制限する企業は増え続け、従来の“箱売り”では販売台数を伸ばすことが難しくなった。一方、プリンタの販売手法に慣れた事務機ディーラーにソリューション販売力を持たせるまでには相当な時間を要するし、ソフトとMFPなどのハードを顧客の要望に応じ開発する力を持ち合わせていない。
このため、リコーは一定基準を満たしたソリューションの“弾”を増やし流通させる手段として同プログラムを開始した。現在、同認定商品はグループのリコー販売7社や2次店の事務機ディーラーを通じ、全国のSMBへ拡販されている。リコー本社内では、「認定商品をもっと拡大し、地場の有力SIerにも販売してもらう仕組みを検討中」(寺井グループリーダー)と、「PS事業部」と呼ぶパートナー支援部隊で具体的な戦略を打ち出すタイミングを見計らっているという。
一方の地場ITベンダーは、地場の実状に即したソフトウェアを開発し自社の“テリトリー”内で販売している。しかし、販売数量を伸ばすには限界があり、販社を開拓する余裕もない。リコーの同プログラムは、こうした課題を払拭する効果を生み出しそうだ。寺井グループリーダーは「認定商品は、ITに不慣れなSMBが普通に使える製品になるよう研ぎすましている」と話す。
リコーでは現在、SaaS・クラウドコンピューティングに向けた基盤整備に力を入れている。将来的には、こうした認定製品がサービス基盤からリコーの「商流」に乗って販売されることになる。