“地域による地域のための”施策
東京・多摩地域(4市)でユニークなIT化施策が動き出した。多摩地域の自治体、商工会/商工会議所、金融機関、IT関連の計13団体が協力体制を敷いて、同地域の中小ユーザー企業のIT化促進とそこに所在する中小ITベンダーのビジネスを活性化する施策を開始する。1月21日には、この施策「たまIT戦略会議」の発足イベントを開催。同施策に関わるのはほとんどが多摩地域の団体や企業。“地域による地域のための”プランが多摩で始動した。
「たまIT戦略会議」は、東京都八王子市・立川市・三鷹市・青梅市の4市で構成する多摩地域の団体・企業が中心。4市の自治体とその商工会議所/商工会、IT関連4団体、多摩信用金庫がメンバーだ。多摩地域にある企業のIT化促進と、ITベンダーの地元ビジネスの活性化が狙い。ユーザーとベンダー、両者とも特に中小企業に照準を当てた試みだ。
4市にはすでに「八王子ITネットワーク(八王子市)」「たちかわIT交流会(立川市)」「三鷹ICT事業者協会(三鷹市)」「青梅IT事業者組合(仮称、青梅市)」と、各市それぞれIT施策を担う業界団体がある。「たまIT戦略会議」はそれらが一致団結し、多摩地域という一つの枠組みで、「地元のIT市場を元気にしよう」というわけだ。まさに“多摩の多摩による多摩のための”ローカル施策だ。地域の業界団体が手を組み、融資に関わる金融機関も巻き込んだIT活性化施策は全国的にも珍しい。
発足イベントには、有料にもかかわらず、多摩地域の中小ITベンダー経営者など約200人が参加。会場は満員の盛況だ。同会議が進める四つのITベンダー向けプラン概要を発表するとともに、経済産業省の夏目健夫・情報化人材室室長が同省の2009年度IT関連施策を説明した。また、オープンソースソフトウェア(OSS)の言語「Ruby」開発者のまつもとゆきひろ氏を招いたトークセッションも行った。同会議議長を務める高島利尚氏(ITコーディネータ協会副会長)は、「地域企業のIT化には、地域ITベンダーの力が必須。多摩地域のITベンダーの事業活性化を重要ポイントに置く」と話し、地元IT企業の支援を活動指針として重視することを訴えた。
発表された4プランはバラエティに富む(図参照)。パッケージ事業推進からビジネスマッチング、プロジェクトの開発分担モデルに人材育成まで。どれも中小のITベンダーにとって有益な施策であることは間違いない。多摩で“産声”を上げた民間主導のこの会議の成果次第では、他地域でも同様の取り組みが始まる可能性があるだけに、同会議の今後の動きは注目に値する。「発足イベント時が一番盛り上がり、その後は尻すぼみになるのが業界団体の常」(参加者の一人)となるようなことは何としても避けたいところだ。活発な活動ぶりを期待したい。(木村剛士)