“国産開発言語”に熱い視線
地域のIT産業を活性化 福岡で国産コンピュータ開発言語「Ruby(ルビー)」の人気が高まっている。Rubyの技術やビジネスをテーマとした団体活動が活発化しており、県知事も地域のIT産業の振興に役立てるツールとしてRubyを重要視する。2月下旬には知事の肝いりで、第1回目の「フクオカRubyフォーラム」を開催。Rubyを活用した事業者を表彰する「フクオカRuby大賞」の表彰も併せて行った。

Rubyは、島根県に本社を置くSIerのネットワーク応用通信研究所フェローのまつもとゆきひろ氏が考案したものだ。日本より先に欧米での利用者が増え、現在では主要な開発言語の一つにまで育ちつつある。扱いが容易で、アイデアを短時間で具現化しやすいのが特徴だ。国内でもRubyを使うSIerが増えており、福岡ではRubyの可能性を地域のIT振興に結びつけようとしている。
福岡でRubyが注目を集めるきっかけになったのが「Rubyビジネス・コモンズ(RBC)」の活動である。東京に本社を置くソフト開発のイーシー・ワンが、福岡で優秀な人材を確保するきっかけづくりにと、Ruby技術者の集いを2007年に立ち上げたのが始まりだ。Rubyの勉強会を定期的に開催している。こうした経緯から、福岡におけるRuby技術者の層が厚くなっていることに可能性を見出したのが麻生渡・福岡県知事。地元のITベンダーに呼びかけて「福岡Rubyビジネス拠点推進会議(F-Ruby)」を昨年設立した。主にRubyに根ざしたビジネスを発展させ、産業集積の度合いを高める推進団体としての役割を果たす。
そして今回、第1回目の開催に至ったのが「フクオカRubyフォーラム」である。Ruby大賞では、韓国の気象予報に関する非営利団体「APEC Climate Center」が大賞を獲得。優秀賞は地元福岡のITベンダー「ナインアローズ」や東京の「まちづくり三鷹」が表彰を受けた。応募総数は、国内58件、海外20件と「予想を大きく上回る応募数」(まつもと氏)とRubyの活用度合いに手応えを感じている。また、福岡でRubyが積極的に活用されていることを、国内外に印象づけることにもつながった。
麻生知事は、「Rubyへの取り組みが福岡の情報サービス産業のパラダイムシフトを起こすのに有用だ」と述べ、F-Rubyの西岡雅敏会長(福岡CSK社長)は、「アイデアを具現化しやすいRubyの特性を生かし、独自性のあるビジネスを展開する必要がある」と、会場に集まった約300人のRuby関係者向けてメッセージを発した。
首都圏などの大手ベンダーの下請け仕事が多い福岡の情報サービス産業に、今の不況は深刻な影を落としている。Rubyを足がかりとして、景気回復後のビジネス拡大に向けたIT産業の基盤づくりに取り組む。(安藤章司)