要望強いSMBモデルも一挙増加へ

「新年度はレノボ・ジャパンを再定義する」。ラピン社長は3月下旬、本紙の単独インタビューに応じた際、力強くこう語った。それもそのはず、レノボ・ジャパンの主力製品であるPCの国内市場は今年に入って落ち込みが激しく、転換点にあるからだ。
電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、PCの出荷台数は1月で前年同月比18.7%減、2月は昨年4月以来最大の下げ幅となる同21.3%減となった。PCの出荷台数減少は国内だけではなく世界的傾向で、レノボの全世界での販売台数は、第3四半期でみると前年同期比で5%減、成長市場の中国でも7%減というネガティブな数字になった。レノボ本社は市場環境を受け、1月にリストラプログラムを発表。3億ドル(約300億円)のコスト削減を図る計画を示した。
こうした世界的不況のなか、国内ではそれを打ち砕く術として、パートナーへの支援拡充とSMB向け製品数増加を推進する戦略を打つ。パートナー支援内容の拡充は、4月中にパートナーを募ったイベントで初披露する予定で、ラピン社長は説明を控えたが、目玉は販売奨励金(インセンティブ)制度の見直しになりそうだ。販社が同社製品を販売した際に受けられる分かりやすいメリットであるインセンティブの内容を強化することで、既存パートナーの販売意欲を掻き立て、新規パートナーの獲得も狙うつもりだ。

その一方で、製品ラインアップの充実を図る。5月から新モデルを順次投入し、合計15製品を新たに国内市場で売り出す計画だ。ラピン社長はこう話す。「『Think Pad』は先進的な機能を多く盛り込んだブランドで、いわばロールスロイスのようなもの。ただ、SMBのユーザーには関係ない機能もある。パートナーからは中小企業に適したモデルを出して欲しいという要望を多くもらっている。SMB仕様のモデルをアグレッシブな価格で提供するつもりだ」。つまり、今以上に低価格な製品を販売する考えを示唆している。
レノボ・ジャパンは本社が米IBMのPC事業を売却したのを機に設立され、4月28日で丸4年を迎える。日本ではNECや富士通といった国内メーカーが強く、海外市場と比べてビジネス環境が厳しい。そのあおりを受け、日本法人の成長率は低い。昨年10月に就任したラピン社長には、こうした状況を打開する重責が課せられている。「レノボ・ジャパンを再生したい」という思いが実績にどう結びつくか。ラピン社長が初めて大々的に動いたといえる今回の戦略が最初のマイルストーンとなる。(木村剛士)