バッチ処理や運用の手間省く
中堅・中小企業(SMB)においても、増え続ける企業内の重要な情報資産をバックアップ/リカバリする必要性が高まっている。とはいえ、IT管理者が専門以外の複数業務をこなさなければならないSMBでは、バッチ適用などの手間やコスト負担などが障壁となり、なかなか実現できていないのが実状だ。これを補うため最近では、「SMB向け」と銘打ったソリューションや製品がネットワーク機器メーカーなどから相次ぎ投入されている。企業の「事業継続」面で注目が集まっているだけに、ITベンダーは需要の拡大に期待を寄せている。
テープ保存などの人為的ミス防止
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2年前、SMB向け需要増を見込んでバックアップ関連製品のラインアップを拡充した。この際に発売した製品が日常のバックアップ作業を軽減するストレージバックアップ製品「HP StorageWorks D2D120 Backup System」だ。容量が1.5TBで、ネットワーク上のサーバーの最高4台分のデータを同時に保存できる。同製品の説明資料によると、「バックアップに失敗する主要な原因であるテープデバイスとメディアカートリッジ管理上の人為的ミスがなくなる」という。テープベースのシステムに比べて手動操作手順が少ないため、「IT管理者の人員が限られるSMBに最適」と、SMB向けにSI(システム構築)を施すSIerなどへ積極的に売り込んでいる。
ハードウェア関連では、EMCジャパンのストレージ製品群を利用した導入・設計サービスを大塚商会が今年2月に開始している。ディスク構成やパフォーマンスの最適化、バックアップの設計など、SMBには荷が重い、煩雑で専門的な技術を必要とする作業を同社が請け負う。大企業に限らずSMBでもニーズが高まっているファイル共有や専用機「NAS(ネットワーク接続性ストレージ)」などの複数プロセスを一元化。同社はバックアップ/リカバリ(リストア)ソフトウェアなどを利用した「ディザスタ・リカバリ(DR)」用ソリューションで実績があり、こうした技術者ノウハウを生かしてSMB向けに展開している。
IT管理者不在の穴を埋める
ソフトウェアの領域では、バックアップベンダーの旧ベリタスソフトウェアを買収したシマンテックが、ベリタス製品を継承するSMB用途のWindowsサーバー環境向けのシステム復旧ソリューション「Symantec Backup Exec System Recovery 8.5 Basic Edition(BESR)」を投入している。SMBや中堅・大企業の部門や支店などサーバーを運用するIT管理者に簡単操作で迅速にバックアップ/リカバリ処理できる環境を提供している。データベース「SQL Server」などのシステムを止めずに「オンラインバックアップ」できるのが特徴。これとストレージ機器などハードウェアを関連させたソリューションが出始めているという。

IT資産管理ソフトウェアの開発・販売会社であるクオリティは、クライアントPCだけでなく「サーバーまでを含めたソリューション展開」を表明した。今夏には、その代表的な製品として「Quality Quick Recovery(QQR)」をリリースする予定だ。QQRは「Continuous Data Protection(CDP=継続的データ保護)」を実現するソリューションで、日本発のバックアップ/リストア製品。保護対象のサーバー変更を常時記録・トラッキングできる。データは永久差分バックアップ形式で保存されるため、有事には任意時点データをリカバリし、障害復旧時の作業負荷を軽減できる。
CDP製品としては、外資系ソフトウェアベンダーのバックボーン・ソフトウェアが、「30秒でデータリカバリできる」ことを売りにした「NetVault Real-Time Data Protector」を今年4月に出荷した。同製品は、データ損失もほぼゼロでリカバリを行え、リカバリしたデータをそのままアプリケーションから完璧に使用できるため、「ダウンタイムを劇的に減らすことによって、事業継続と収益性を確保できる」と訴求し、販売パートナー経由の販売を本格化させる。同製品は価格が400万円弱と中小企業に敷居は高いが、同社はSaaSでの展開についても言及しているため、SMB領域での利用が広がる可能性がある。
ソフトウェアとハードウェアの双方ベンダーが融合してSMB向けバックアップ・ソリューションが実現した例もある。日本IBMのディスクtoディスクバックアップソフト「IBM Tivoli Storage Manager FastBack」と、アイ・オー・データ機器のハードディスクドライブ「RHD4-UXEシリーズ」の「e-SATA」を組み合わせ、テープ中心のバックアップ市場に製品を投下する。
SMBなどではデータ容量が大きくなり、テープ・バックアップの運用負荷に支障をきたしている。こうしたユーザー企業に対し、両社の販売網を生かして拡販する計画だ。