ネットワンシステムズ(吉野孝行社長)は、ユーザー企業のすそ野を広げる戦略を打ち出した。「カバレージ拡大戦略」と称し、SIerなどとのアライアンスでビジネス拡大を見据える子会社のネットワンパートナーズを最大限に活用することで、中堅企業を中心に新規顧客を開拓する方針だ。新領域のビジネスとして、今年度の売上高を110億円規模に設定している。

これまでネットワンシステムズがターゲットとしていたユーザー企業層は年商1000億円以上。しかも、トップ500社に絞り、着実に案件を獲得してきた。吉野孝行社長は、「約300社を優良顧客として確保した」としている。通信事業者などSP(サービスプロバイダ)を中心に製品・サービスを提供してきた。最近は、NTTグループによるNGN(次世代ネットワーク網)へのネットワークインフラ構築が収益の源泉となり、大きなビジネスにつながっている。
大企業の一般オフィスを対象にネットワークインフラのリプレースを促したことも功を奏した。こうした取り組みで、昨年度(09年3月期)連結業績は、売上高1311億1900万円(前年度比17.4%増)と2ケタ成長を達成。営業利益については、前年度の約1.9倍にあたる88億8100万円という好結果となった。
ただ、吉野社長は「ビジネスを拡大していくためには、市場のカバレージを広げることが重要となる」と判断している。ある特定の市場だけに固執していたのでは、「ネットワーク関連機器市場は成熟期にある。これまでのビジネスモデルだけでは継続した成長を見込むことは難しい」からだ。そこで、昨年秋に子会社としてネットワンパートナーズを設立。同社でメーカーやSIerなどとのアライアンスを強化し、需要を掘り起こしていく戦略を打ち出したのである。ネットワンパートナーズについては、昨年度に基盤整備を済ませ、今年度から本格的にビジネスを手がけていく。
新規開拓する市場は、中堅企業までを含めた領域だ。「これにより、10%プラスアルファの継続成長を果たしていく」という。これは、メーカーやSIerなどとのアライアンスが進んでいることを物語っている。協業したベンダー名を具体的には明らかにしていないものの、「さまざまな業界で中堅企業にアプローチしていく素地が固まった」と自信をみせている。
ネットワンパートナーズで見込んでいる110億円の売上高は、グループ全体の売上規模からみれば8%程度を占めるにとどまっているが、新規顧客の開拓によってビジネスチャンスを広げることになりそうだ。その一つとして、「ネットワークの遠隔監視などサービス事業の拡大につながるのではないか」とみている。ベンダーとのパートナーシップ深耕も狙いとしていることも含め、ネットワングループが大きく変貌する可能性を秘めている。(佐相彰彦)