法人向けネットブック事業に着手
パソコンメーカー各社が、法人向けネットブックの販売に本腰を入れる。コンシューマ市場では、5万円台という価格の安さで爆発的な人気を集めたネットブックだが、同市場で一服感が出始めている。一方、法人市場では先行き不透明な景況感でコスト削減に取り組む意識が高まっている。そうした背景があり、メーカー各社は販路構築の一環として、“低価格”を武器に法人に向けてネットブックを売り込むことに力を入れている。
NECは、法人向けモバイルパソコン「VersaPro UltraLite タイプVS」を5月26日に販売開始。725gの軽さと最薄部15.8mmの薄さを武器に、拡販を図っていく。伊藤正文・ビジネスPC事業部長は、「法人のリプレース需要を掘り起せる」と、大きな期待を寄せる。
また、「他社のネットブックと一線を画す」(伊藤部長)という。販路がディストリビュータやSIer経由という特色を生かし、「当製品をきっかけに、さまざまなソリューションを提案する。企業のIT投資意欲を促進できるようになるだろう」と分析する。
デルは、学校向けに特化した「Latitude 2100」の販売を5月20日から始めた。シンクライアント端末として使うことを想定し、高速で大容量データを送ることができるギガビットイーサネットを採用。学生がネットワークにアクセスすると、教師にライトで知らせる機能を搭載した。ディストリビュータ経由のほか、SIerと組んでシンクライアントシステムでも売り込む。
教育機関に絞ったのは、「まだ手つかずで、市場拡大の可能性が高い」(垂見智真・北アジア地域公共事業マーケティング本部クライアントソリューションマーケティングマネージャー)とみているからだ。専用モデルの投入で、他社に先駆けて需要を取り込む。
ネットブックブームの火つけ役である台湾メーカーも日本での法人開拓を本格化。日本エイサーは、6月にコンシューマ向けに発売する「Aspire one 751」を一般オフィスなどにもアプローチしていく。同時に、「Dシリーズ」など既存モデルも投入。販路は、ダイワボウ情報システムなどを確保している。
「法人市場のポテンシャルは、まだ不明」(瀬戸和信・事業支援部マーケティングコミュニケーション課マネージャー)と手探りながらも、「今年は、法人PCの導入要件がセキュリティ一辺倒から低コストと導入の容易さへと変化、ネットブックに注目が集まる」と判断している。
各メーカーが法人へのネットブック販売に踏み出したのは、パソコン事業での新しい収益源を生み出すため。最近では、不況の影響でコスト削減を追求する企業が増えている。「業務でネットブックが活用できる」といったアピールで、リプレースを促進。ネットブックの新しいマーケット創造につなげる。(佐相彰彦、米山淳)