ベンダーが集いNWの可能性を模索
NWの整備はWiFiが有力候補

ネットワーク(NW)環境の現状や課題を踏まえ、世界主要国のNW関連製品メーカーや通信事業者が集い、今後の可能性を導き出すための「NetEvents2009 Asia-Pacific Press Summit」と呼ばれるイベントがシンガポールで開催された。参加企業のほとんどが認識したことは、新興国でNW環境の整備に大きなビジネスチャンスがあるということだった。
インドの動きは要注目
NW関連製品メーカーが最も興味を示しているのはインドの動きだ。「オフショア開発」を手始めに台頭してきたインドが、最近はグローバルビジネスを視野に入れて躍進している。今回のイベントでは、インドの通信事業者であるタタ・コミュニケーションズでプレジデントを務めるスニール・ジョシ氏の基調講演からスタート。同社の優位性について意気揚々とスピーチしていたのが印象的だった。

同社が今、力を入れているのは回線のグローバル化だ。各国の通信事業者に話を持ちかけて回線を敷設する。ユーザー企業に対しては本社を中心に、さまざまな国の支社や支店で統一したネットワークが活用できることを訴えるほか、ITシステムやアプリケーションサービスの点でニーズに適した製品・サービスを提供する。これは、欧米の通信事業者が得意とする「グローバルネットワーク」のビジネスモデルと同レベルの動きだ。タタ・コミュニケーションズでは、「CDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)にフォーカスし、当社が提供する回線サービスの優位性をアピールしていく」(ジョシ氏)という。例を挙げれば、オンラインゲームなど大容量データを配信し続けなければならないエンタテインメント分野だ。これにより、各国での回線開通を一気に進める。日本や欧米の通信事業者にとっては脅威的な存在になる可能性を秘めている。一方、NW関連製品メーカーにとっては、インドの通信事業者と組み、ビジネスを拡大するチャンスが出てきたことになる。
新興国ではNGNとWiFiがカギ

NW関連製品メーカーが気にしているのは、新興国でのNW環境についてだ。新興国へのさらなる進出に力を注いでいるのは、グローバルで大手通信事業者に位置づけられる英BTグループ。グローバルサービス組織のテレコンサルタント部門でディレクターを務めるドミニク・アリーナ氏は、「新興国は、次世代ネットワーク網(NGN)を敷設しやすい地域」とアピールしており、顧客と接点を持つオペレーティングの強化を急いでいる。新興国は有線が発達していない地域が多い。先進国と比べて大規模なネットワークのリプレースが必要ないというわけだ。そのため、「中国をはじめアジア地域を対象にユーザー企業を増やす」方針を示している。
NGNに加え、新興国のNW環境を整備できるとの見方が強いのはWiFi。イベントでは、自社製品が一段と強みを発揮するとアピールしたベンダーもあった。そのベンダーの一例として、WAN最適化製品を主力に据える米リバーベッドテクノロジーが挙げられる。バイスプレジデントでアジア地域を担当するジョン・ヒグス氏は、「少ないコストで高速ブロードバンド化を加速させるのがWANである」と訴える。既存の電話回線を使ったナローバンドでも、WANを使えば若干のリプレースで広域にわたって回線を高速化することができるからだ。

ほかにも、「WiFi環境を生かすためにはモバイル端末の拡充が迫られる」との結論に達したパネルディスカッションも開かれた。今ある端末では、低価格のネットブックがWiFiの利用を高めるきっかけになる、との結論も導かれた。
今回のイベントを通じて、世界各国の通信事業者の新しい動きに加え、イベントに参加したNW関連製品メーカー各社が新しい国への進出を虎視眈々と狙っている姿が垣間見られた。グローバル化を見据えれば、さまざまなビジネスチャンスが到来することも物語っている。