SaaSセキュリティの展開活発化

　SaaS型セキュリティ提供の動きが活発化している。2005年からSaaS型の電子メールセキュリティを提供しているメッセージラボジャパン、米国のベンチャー「Zscaler（ゼットスケーラー）」の日本法人がウェブセキュリティサービスを本格化。ウェブセンス・ジャパンでもホステッド型の電子メールセキュリティの提供を計画するなど、SaaS利用がより一層進んでいきそうだ。

　最近のSaaS市場の動きを見ると、Googleがホステッド型電子メールセキュリティの大手米ポスティーニを買収、またシマンテックがメッセージラボを買収するなど、他分野の企業がSaaS型サービスを提供するベンダーを買収する動きが活発化している。

　メッセージラボのアンドリュー・アンタル・オーストラリア アジアパシフィックマーケティングディレクタは「この市場は加速化する形でSaaSが伸びている」と話す。「IDC、ガートナー、シマンテックのデータをもとに電子メールセキュリティの市場をみると、08年では6億ドルだったものが、2012年には17億ドルまで上昇するとみられる。また、電子メールセキュリティをグローバルで比較してみると、英国は40％以上と最も導入が進んでいる」としたうえで、日本、ドイツは5％程度だが、「日本市場はコアの市場であり、SaaSの採用は高まっていくだろう」と分析している。なお、米国では多くのセキュリティベンダーがSaaS提供に乗り出している。

　メッセージラボジャパンでは今年3月にウェブセキュリティ「Managed Web Security Services」を提供開始した。同社は06年より日本市場でメッセージングセキュリティを提供しているが、ターゲットを大企業から、今後中小企業に向けた拡販戦略を本格化する。また、ウェブフィルタリングにおいて、グローバルで高いシェアを誇るウェブセンス・ジャパンは今年後半をめどにSMB向けにホステッド型の電子メールセキュリティサービスを開始する。またSaaS型セキュリティサービスの新興企業も日本市場での展開を本格化する。米国のベンチャー、ゼットスケーラーがウェブセキュリティを国内で本格提供を開始した。同社はISPへのSaaS導入をねらうほか、まずは中堅を中心に導入をすすめていく意向だ。

　セキュリティのSaaSは現状、電子メールもしくはウェブセキュリティのポイントソリューション、または電子メールとウェブセキュリティの両方を守るものを提供するベンダーが中心となっているが、今後は、「電子メールとウェブを含めて『マルチプロトコル』での保護が求められてくる」と前出のアンタル氏は話す。

　同じ調査結果では、アプライアンスも08年の8億ドルから12年に15億ドルに伸長するとみている。自社運用型のアプライアンスとSaaSは競合するものとみられがちだが、メッセージラボジャパンの山本誠治代表取締役、ウェブセンス・ジャパンの公家尊裕代表取締役ともに「アプライアンスとSaaSは競合するものではなく、あくまでも顧客の選択肢を広げるもの」としている。（鍋島蓉子）