3年先も08年度比マイナス成長
日立製作所(川村隆社長)の情報・通信グループは6月上旬、担当するハード・ソフト販売やSIなどの事業セグメント「情報通信システム」で中期業績目標を発表した。それは、2011年度(2012年3月期)に売上高2兆円、営業利益率7%の達成だ。同グループの昨年度実績は売上高2兆211億円、営業利益率が7.7%(HDD事業を除く)。日立は、3年先でも2008年度実績を上回れない見通しを立てた。
日立の「情報・通信グループ」は、サーバーやストレージなどのハードとソフト販売、SI・サービスやソリューション事業「情報通信システム」を担当する。同セグメントは、連結売上高のうち30%弱を占め、同社の7事業部門中、社会インフラ系の「電力・産業システム」に次ぐ2番目に大きい事業セグメントである。営業利益も全部門中2番目に大きい。昨年度のHDD事業を除いた業績は、売上高が2兆211億円で営業利益率は7.7%。景気後退の影響を受けて、減収だったものの、営業利益率は0.6ポイント上昇させている。
利益率の高さは、日立内の事業部門だけに限らず、競合他社と比較しても明らかだ。セグメント内のビジネスが完全に一致しないため他社との単純な比較は難しいが、類似事業部門と比べてみると、NECの「IT/NWシステム」部門の営業利益率は4.6%、富士通の「テクノロジー・ソリューション事業部門」は6.1%(ともに08年度の連結実績)となっている。
この高収益事業部門が6月上旬に開いた中期事業戦略説明会で掲げた業績目標は、今年度で売上高9.2%減、営業利益では40.2%減(HDDおよび日立国際電気の業績除く)。3年後の2011年度でも営業利益率は08年度を下回る見通しを示した。
計画を発表した中島純三・執行役専務情報・通信グループ長&CEOは、「08年度は景気後退の影響を受けたが、製造業に比べてまだ厳しくなかったという感触。悪影響は他の産業よりも遅れてやってくる」と説明。「09年度以降に景気が回復するという期待もある。悲観と楽観が入り交じった数字」とも表現した。コンサルティングなどのサービスビジネスを伸ばし、国内よりも成長の伸びしろが大きいとみている海外市場で従来以上に売り上げを伸ばす。グローバル展開とソフト・サービスビジネスをさらに強化する計画だ。
景気後退の影響がどこまで響くかが、今回日立が示した目標が現実的かそれとも保守的かの判断材料になるだろう。だが、業種・業態、ユーザー企業の規模問わずに、グローバル展開する日立の情報・通信グループは、IT業界全体の縮図ともいえる。もし、日立が今回示した中期目標通りの数字しか残せなかった場合、IT業界全体も厳しい環境が続くとみられる。(木村剛士)