EAIの実績をIBM製品で「横展開」
キヤノンソフトウェアと日本IBMは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)ビジネスを共同で強化する作業を本格化している。キヤノンソフトは2002年からEAI(企業データ連携)関連事業で実績をあげており、このノウハウを生かしつつ、IBM製品群などで「売れる」ための「SOAソリューション」を確立する。両社協業の狙いなどについて、担当責任者に聞いた。(聞き手 週刊BCN編集長 谷畑良胤)SOAを実装する機運高まる
――協業の経緯と理由について教えてください。
白倉 当社(キヤノンソフトウェア)は2002年からEAI(企業データ連携)関連のソリューションを展開してきました。この間、大手総合スーパーのシステム基盤構築など50社以上のシステム開発・運用実績をあげ、顧客から高い評価を得たと自負しています。しかし、基盤ビジネスは新規顧客を獲得しにくくなってきています。そこで、これまでに培ったEAI関連ソリューションを発展させて「SOAソリューション」を展開する体制を整えました。日本IBM様の支援プログラム「PartnerWorld Industry Networks(PWIN」)に参加し、日本IBM様の協力を受けて推進することにしたのです。ラスベガスで開催されたIBMのSOAコンファレンスのIMPACT参加や天城での共同戦略セッションの実施も決め手になりました。
井上 IBMは04年5月に「SOAアーキテクチャ」を発表、当社がもつソフトウェア群を含めてSOAを積極的に推進すると表明し、このことをグルーバルレベルで強くメッセージしてきました。ただ、ITベンダーやユーザー企業では、SOAを学ぶ意欲があっても実ビジネスに結びつけるまでに至っていませんでした。ここ数年をみると、ユーザー企業側でSOAを実装する機運が高まっています。IBMはSOAを実装するうえで必要なミドルウェアを提供してきました。しかし開発が大規模になりがちで、お客様が簡単に実装に踏み切れないという課題がありました。そこで特定分野の技術力が高く、産業に強みをもつパートナー様と協力し、SOAビジネス市場を活性化することが重要だと考えました。
――日本IBMがもつSOAを実装する際に用いる製品群を教えてください。
井上 IBMでは、SOAで必要と考えられる機能ドメインを表した「SOAリファレンス・アーキテクチャ」を提唱しています。「WebSphere」のほか「Tivoli」「Rational」「Lotus」「IM(Information Management)」の5つのIBMブランドが提供する製品により、SOAリファレンス・アーキテクチャの各機能ドメインを実現して、ソリューションを構成していきます。「WebSphere」には、既存のITリソースやサービスを結合してBPMを実現するミドルウェア製品である「WebSphere Process Server」や、買収してIBM製品に加えたビジネス・ルール・エンジン製品「WebSphere ILOG JRules」などがあります。「WebSphere ILOG JRules」は、自社内のサービスのビジネス・ルールを頻繁に変更する場合に、業務担当者が簡単に修正できる仕組みです。ユーザー企業の用途や既存システムのどこからSOAを実装するかに応じて製品を揃えています。
他ベンダーと相互補完して展開

――日本では、こうしたIBMアーキテクチャを使ってSOAビジネスをどう拡大しますか。
井上 SOAビジネスを日本で発展・浸透させる協力組織としてパートナーと共同で「SOA Partner Community」を設立しました。これら製品群をユーザー企業に分かりやすく提案するには、産業や業務に特化した具体的なソリューションが求められています。パートナー側で戦略的にフォーカスする領域を選択し、日本IBMがそこを支援する仕組みです。組織を立ち上げて強力にSOAビジネスを推進いただいているキヤノンソフト様には、理事を引き受けていただいています。パートナーの多くは、ユーザー企業へどうSOAの実装を提案し、投資対効果をどう説明すべきか悩んでいます。パートナー同士で課題を共有し、相互に補完する関係を作ることでSOAビジネスの活性化を狙っています。
――キヤノンソフトはどんな期待をしてますか。
白倉 当社はEAIで培ったシステム連携基盤には実績があり、その強みをどう生かすかを考えています。SOAを展開している他のベンダー様は、SOAの一部の領域に長けていたり、SOAを実装したいという既存顧客を抱えているものの具体的な提案に苦労しているなど、SOAに対する取り組みはさまざまです。各々のパートナーの得意分野について相互に共有し、補完し合いながらお客様に対してSOAを推進することができると考えています。
――具体的には、どんなSOAソリューションを考えていますか。
白倉 当社が提供するSOAソリューションは、各サービスを連携するESBを中核に、Web対応端末エミュレーター「TCPLink Enterprise Server」を利用した既存システム画面のラッピング統合や、当社のWeb構築アプリケーション構築ツール「Web Performer」での画面統合、日本の商慣習に応じた承認機能などが実現可能な「ワークフローコアエンジン」などを組み合わせて提供します。
PartnerWorld Industry Networks (PWIN)=
http://www.ibm.com/jp/partners/partnerworld/pwin