SMBではバックアップのニーズも

ストレージ関連ビジネスで、インテグレーションを中心としたサービスビジネスにチャンスが到来している。世界同時不況でストレージの機器販売は鈍化する可能性が高いが、サービスは伸びている。ベンダーは、いかに自社の強みを生かしてソリューション提案を推し進められるかがカギを握る。またSMB(中堅・中小企業)市場では、バックアップの必要性を認めるユーザーが増えており、ストレージシステムのリプレース需要を掘り起こせそうだ。
■サービスは年平均3.8%で成長
調査会社IDC Japanは、国内ディスクストレージシステム市場が伸び悩む可能があると予測している。売上実績は2007年をピークに、2008年は前年比3.4%減の3004億5900万円。世界不況で大企業を中心にIT投資を抑制していたほか、機器単価の下落も影響している。IDC Japanは、この傾向が2年程度は続くとみており、売上予測として09年が2711億1900万円(前年比9.8%減)、10年が2674億2200万円(同1.4%減)の見通しを立てている。11年以降は回復し、11年が2728億7100万円(2.0%増)、12年が2774億9500万円(1.7%増)、13年が2802億4800万円(0.9%増)と予測する。
一方、「コンサルティング」「導入・構築」「管理・運用」「保守」などストレージサービスは伸びるという。08年の売上実績は前年比1.8%増の2027億00万円だったが、これはSIerによるサービス体制が整ってきたことや、ユーザー企業がシステムリプレースに踏み切らなかったことによる保守サービスの延長などが要因。IDC Japanでは、「07年まではプロフェッショナルサービスが順調に拡大していたが、08年の景気後退で成長は停滞した」としており、保守サービスは伸びたが、新規販売に伴う契約は減少したという。ただ、この傾向は「一時的なものであり、ストレージインフラの効率化、ミッションクリティカル化に伴うストレージサービスの需要拡大は、景気とともに回復するだろう」と分析。とくに仮想化技術の導入によるサーバー統合が、ユーザー企業のITインフラ運用コスト削減に効果をもたらしていることから、ストレージ再構築案件は景気回復を待たず徐々に増えていくという。また、サーバー仮想化や統合化の環境が整備されることで、ストレージインフラに対する可用性や信頼性、事業継続性などへのニーズが高まるとしている。そのため、08年から13年までの年間平均成長率を3.8%と予測している。
■ストレージの重要性を再認識
大企業を含めたストレージ市場がサービスを中心に成長する可能性を秘めるなか、はたしてSMB市場の状況はどうなのか。
SMB市場を中心にIT関連の調査を手がけるノークリサーチでは、「データ容量の増大とともに、ストレージ関連製品へのニーズはますます高まっていく」(岩上由高・シニアアナリスト)と分析。なかでもバックアップに関しては、「小規模企業ほど関心をもっている」としている。
同社がユーザー企業を対象に実施したアンケートでは、「バックアップ導入の意向がある」としたのは、年商500億円以上の企業が約2割だったのに対し、5~50億円の企業は倍の約4割だったという。「ディスク容量の把握が課題になっており、その解決策としてバックアップを求めている。また、運用面での効率化を求めていることから、ストレージのマネジメント面に意識が高まっている」と、岩上シニアアナリストは説明する。そのため、これまではサーバー管理を主目的に導入していた統合運用管理ソフトが、ストレージ管理のために購入するケースが出てくるだろうという。「今後は、バックアップソフトと統合管理ソフトを組み合わせて導入するケースが多くなるのではないか」とみている。
なお、接続形態については「導入しているストレージ資産を残したいことから、DAS(ダイレクト・アタッチド・ストレージ)を構築している場合はDAS、NAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)ならばNASといったように、既存の接続形態を継続する」という。SMBではDASやNASを構築しているケースが多いことから、ベンダーにとってはSMBへのストレージ提案で既存の接続形態を重視する必要性があるわけだ。
こうした分析を踏まえると、ストレージ導入の機運は高まっているとみていいだろう。特筆すべきは、SMBがデータ管理面を意識していることだ。ベンダーにとっては機器販売とサービスを含め、ストレージ関連ビジネスを前面に押し出した展開が新規顧客やリプレース促進のチャンスを生むことにつながるからである。