マーケティング特化のクラウド団体
ソニー元CEOの創業会社が事務局 
ソニーの元CEO、出井伸之氏が立ち上げた経営コンサルティング会社クオンタムリープ。同社が事務局を務めるSaaSの普及・啓蒙団体「クラウド・ジャパン・イニシアティブ(CJI)」が発足し、本格的に動き始めた。「尖がった若いSaaSベンダーを応援する」がコンセプトで、ユニークなアプリケーションベンダーに限定して組織化し始めた。
今夏に立ち上がったCJIの会員企業は現在5社(図参照)。SaaS型サービスを開発・販売する若いITベンチャーが中心で、事務局はベンチャー支援や経営コンサルティングのクオンタムリープ。事務局で指揮を執るクオンタムリープの山下純マネージャーは、「若い尖がったベンダーのユニークなSaaSサービスを世に広める」と活動方針を説明する。まずは10社まで会員企業を増やすつもりだが、どんな企業でも仲間にするつもりはないという。「独自性があるSaaSベンダーだけが集まるユニークな集団に育てる」(山下マネージャー)のが基本理念だ。
SaaSやクラウドの普及・啓蒙団体が数多く立ち上がるようになったなか、CJIが活動コンセプトとして重視するのがマーケティングだ。「どう広め、売るか」に特化する。SaaS型サービスはパッケージソフトの販売のように、間接販売モデルが築きにくい。そのため、技術力やサービスの品質よりも、販売方法が最大の課題といわれる。優れたSaaS型サービスを開発しても、ゲイン(金)に結びつかなければ意味がない──。CJIはそれを認識し、あえてマーケティングに特化したSaaS普及・啓蒙団体を立ち上げたのだ。
まずは、従業員数300人以下の中堅・中小企業を対象としたセミナーの定期開催、SaaSに関わるベンダー同士のアライアンス促進活動、そして、クラウドに関連する官公庁への認知活動を進める計画。
山下マネージャーはこう話す。 「『どう売るか』の最適な解が現段階で導き出せているわけではない。ただ、マーケティングに特化した活動を続けることは、回答を探す近道になるはず。試行錯誤、模索しながら、その答えを探っていく」
CJIは、ビジネスSaaSやクラウドを2007年から調査・研究していた任意団体「SOABEX」の活動を継承している。SaaSやクラウドを熟知するSOABEXと、ベンチャー育成ノウハウを持つクオンタムリープが融合。大手企業が名を連ねる他のSaaS・クラウド関連団体とは一線を画すユニークな団体が、若いSaaS型ベンダーに特化してそのサービス普及に挑戦し始めた。(木村剛士)