「拡張現実」を用いた製品も
IDGジャパンは09年7月16・17日の2日間、ブログ・SNS、CGMを中心とした専門イベント「Business Blog & SNS World 2009」、次世代の広告技術、マーケティングサービスをテーマとした「Next Advertising & Marketing 2009」、企業向けの3Dインターネット活用を主眼とした「3DInternet Business Forum」を東京国際フォーラムで同時開催した。その様子をレポートする。(鍋島蓉子●取材/文) IDGジャパンによれば、「前回は東京ビックサイトで開催し、『Business Blog & SNS World』で5000人を集めたほか、『VirtualWorldConference & Expo2008』では2000人を集客した」(展示会事業部企画営業担当の兼子真人氏)という同イベント。今回は「Next Advertising & Marketing 2009」も併設し、よりマーケティング色の強い展示会となった。
初日の7月16日は、「次世代のコミュニケーション&マーケティング最新事情~日本経済復活のカギはここにあり!」と題し、時事通信社の編集委員・湯川鶴章氏が、17日は「YouTubeでの動画によるインタラクティブコミュニケーション」をテーマにグーグルYouTube営業部長の牧野友衛氏がそれぞれ基調講演で登壇した。また、電通イーマケティングワン、博報堂の講演も行われるなど、活況を呈した。
▲携帯向けの3D仮想空間
3イベントの一つ「3DInternet Business Forum」では、収益につながりやすい企業向けの商材に絞り、3Di、エイタロウソフト、セカンドコアなど5社の展示が行われた。

出展社の1社、エイタロウソフト(西島栄太郎社長)では、携帯電話向けの3D仮想空間プラットフォーム「Lamity(ラミティ)」を展示した。ラミティは「一つの『街』でそれぞれ同時接続数400人を実現したもので、OpenIDを使って、行き来できる」(エイタロウソフトのエヴァンジェリスト常田絵里氏)のが特徴の仮想空間。オンラインゲーム開発に応用が可能なプラットフォームである。
オンラインゲームではこれまで、ロビー(サーバー下にあるいくつかのブロック)開発など高額な費用を要していたが、このプラットフォームを利用すれば、オンラインゲームのみの開発に専念でき、安価に開発することができる。
仮想空間に出店するユーザー企業にとっては、例えばチャットログの分析やイベントの開催など、マーケティング素材としても役に立つ。現状はNTTドコモのみの対応だが、iPhoneなど複数の端末でも同サービスにアクセスできるようにしていく計画だ。
▲現実の環境に情報を付加

また、3次元形状を活用する会(3D-GAN)のブースでは、CADデータ、3Dデータを取り込み、立体モデルとして出力する3Dプリンタなどユニークな商材も多かった。
「出展については、ある程度マーケットを開拓できている商材をメインにしている」と、イベントの共同開催者である、サイメンの渡辺昌宏プロデューサーは話す。今回は同イベントに連動して、今後マーケットを切り開く可能性のある製品・サービスを選び「NCM(Next Communication & Marketing)2009」を開催。受賞した6種の商材を展示した。そのうちの一つ「3D&AR(拡張現実)部門」では「電脳フィギュアARis(アリス)」が受賞した。
拡張現実とは「現実の環境に、携帯電話の画面などを通して、付加(現実の情報を強化する)情報を与えるもの」(サイメンの渡辺プロデューサー)である。例えば、コカ・コーラのポスターが貼ってある壁を肉眼で見ても特に驚かないかもしれないが、これを携帯電話のカメラで写し、画面を通して見ると、独自キャンペーンの情報が現れるといった具合だ。

「電脳フィギュアARis(アリス)」では、机の上にサイコロ状の「電脳キューブ」を置き、それをWebカメラで撮影すると、PCの画面を通してヴァーチャルリアリティの女の子が現れ、リアルの世界を動き回るというアプリケーション。ユーザーが「電脳スティック」を使って画面を見ながら女の子に触れると、電脳スティックのカードの模様に合わせて、言葉を話したり、着替えをするなど反応するもので巷で話題を呼んでいる。
3Dインターネットの分野は、企業内イントラネット、e-ラーニングでの需要が高まっているが、例えば電子黒板、デジタルサイネージ(電子看板)といったもののコンテンツとしても注目されている。「パネルの価格が下がってきたことにより、デジタルサイネージのディスプレイが大型化している。
例えば、駅の壁面に大きなパネルを用意し、そこで自動車の3Dを映し出すことで、ショールームのような見せ方もできる」(サイメンの渡辺プロデューサー)と展望を話す。
一方、ゲームメーカーなどであれば、これまで作り上げた3Dキャラクター資産を利用したライセンスビジネスの展開も見込めるなど、今後大きな広がりをみせていきそうだ。