秋田県は県庁内のIT化によって、効率化や経費削減に成果をあげた。このIT化に際して地場SIerを起用し、地域を活性化することを模索し始めた。これまで首都圏を中心とする大手ベンダーを起用するケースが多かったが、今後は地場SIerを積極的に使うことを視野に入れている。とくに運用やハード調達などについて、地場SIerに発注をかける方向だ。
「電子自治体」の実現に向け、秋田県がITシステム増強に踏み出したのは2005年度(06年3月期)だった。IT関連経費の削減をテーマに、基幹系をはじめとして複数のシステムをリプレースしてきた。システム見直しで、初年度に維持管理業務について1億3610万8000円の削減を果たすという成果が出た。昨年度は2億1845万6000円を削減。学術国際部情報企画課の伊藤良輝・IT改革推進監は、「システムのリプレースで、業務効率化を図ることができている結果」と自信をみせている。
秋田県が次のステップとして進めようとしているのは、全体最適化だという。菊地智英・副主幹(兼)班長は、「個別システムでは最適化ができている。今後は、システム全体で効果を発揮することが重要」としている。これは、各システムを個別に発注しているためで、システム案件を獲得したSIerがシステム運用を手がけていることになる。「全体最適化という点で大きな壁になっている可能性が高い」(菊地副主幹)。そのため、一昨年度から情報システム調達に向けたマニュアルを策定しており、運用などに関する統一を徐々に進めている状況だ。また、職員の認証に関する共通基盤の構築も検討。「すぐにはできないが、将来的には実現したい」(伊藤IT改革推進監)考えを示している。
こうした庁内IT化に取り組む一方で、今、視野に入れ始めているのが「地場ベンダーの活性化」(伊藤IT改革推進監)だという。秋田県が、調達マニュアルをホームページ上に公開し、大手メーカーに限らず、多くのベンダーが入札に参加できる環境を整えたからだ。全国レベルで適したシステムを募集することが目的だが、地場ベンダーへの発注も視野に入れていることになる。
ただ、はたして実際に地場ベンダーが県システムに絡んでいるケースがあるのか。秋田県情報産業協会の会長を務めるADK富士システムの近藤和生社長は、「基幹システムは大手メーカーが手がけるケースが多い。秋田県には大きなSIerが存在しないのが理由だが、県でも地元を盛り上げることを行ってほしい」と嘆く。大規模な基幹システムを構築・運用できる体力をつけるため、同協会は各会員企業のスキルを詳細に分析したマップの策定に取り組んでおり、「各会員企業の体力アップにつながる取り組みを進めていく」方針を示している。これを受けて、県は「確かに地元ベンダーを一段と活性化させる施策を考えるべき。今後は運用やハード調達で地場ベンダーを採用する策を講じていきたい」(伊藤IT改革推進監)としている。
不景気の影響で、IT関連ビジネスを取り巻く環境はますます厳しい状況にある。地方では落ち込みがさらに顕著だ。そんな状況だからこそ、県とベンダーがともに地域活性化に取り組むことが必要だ。少なからず秋田地域は、まさにその方向に進もうとしている姿がうかがえる。