ネットワンシステムズ(吉野孝行社長)は、オープンなクラウドサービス環境の創出に向けて「クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)」を今年11月上旬に発足する。ITベンダーの参加を募り、クラウドサービスを自由に組み合わせることが可能な共通API(アプリケーション・プラットフォーム・インタフェース)の評価検証を進める。
CBAの設立は、SaaSやPaaS、IaaSなどユーザーが異なるクラウドサービスを組み合わせて利用できるような環境づくりが狙い。各サービスが連携する共通APIの開発にあたって参加ベンダーを募っており、現段階でネットワンをはじめとしてイーダブリュエムジャパンやエイムラック、エクシード、オロ、コネクティ、スマイルワークス、ソリトンシステムズ、ビープラッツの9社が名を連ねる。ほかに、SaaS事業者3~4社が賛同。ネットワンの澤田脩会長は、「発足時の11月上旬には、さらにITベンダーが参加している状態を期待したい」としている。
CBAの発足を決断したのは、日本ではまだクラウドサービスの具体的な利用方法や構築手法などがみえていないからだ。澤田会長は、「そもそもクラウドサービスが標準化されていない。普及が遅れている原因はそこにある」とみている。

CBAのメリットについてアピールするネットワンシステムズの澤田脩会長
次世代データセンター(DC)を中心にコンピュータやネットワークなどのインフラ構築が進んでおり、インテグレータにとってシステム案件が増える可能性がある環境にある。しかし、クラウドサービスを提供するために、こぞってDCを増強したところで、利用者が増えなければ意味がない。DCによるリプレース案件が出てこない可能性もある。インフラ構築を主力事業に据えるネットワンにとっては、大きな痛手だ。こうした背景があって、「共通APIの開発」という名目でアライアンスを組んだとみられる。
また、ビジネス継続に向けてクラウド事業者とのパートナーシップを深めているという見方もできる。最近では、大手ベンダーを中心にPaaSの構築でクラウドサービスの本格化を急ぐ傾向が強まっており、ユーザー企業がシステムをもたない時代の到来も予測できる。インテグレータにとっては、ユーザー企業に対してハードウェアとソフトウェアを組み合わせるインテグレーションのビジネス規模が縮小する可能性がある。共通APIというクラウドサービスの核を標準化することで主導権を握ろうとしているのだ。(佐相彰彦)