インフルエンザなどによるパンデミック(感染症の世界規模流行)への対応策に、企業の間で関心が高まっている。9月20日に開催された大塚商会のパンデミックセミナーは、定員を超える来場者で盛況をみせた。在宅勤務や遠隔地から会議参加など状況に応じたサービスが求められているなか、ユーザーが特に気にするのがセキュリティとコスト。各ベンダーは、仮想化のほかコストパフォーマンスで、パンデミック対策という大きなビジネスチャンスを掴もうとしている。

活況呈した大塚商会のパンデミック対策セミナー
パンデミック発生時に問題となるのが、会社と社員間の連絡方法だ。企業には、インフルエンザに感染した社員が自宅待機を余儀なくされたり、支店の閉鎖で顧客対応ができなくなったりするケースを想定したインフラ整備が求められている。佐藤憲一・大塚商会コンプライアンス室部長代理は、「どこの企業でも、機密情報は社外に持ち出さない前提でシステムを構築している。パンデミックの発生時には、在宅勤務であれば社外のネットワークと繋ぐか、個人のPCに情報を送らなければならないケースが出る可能性がある」として、セキュリティの確保を大きな課題に挙げる。
大塚商会は、NHKメディアテクノロジーのOEMで携帯アドレスを暗号化してASPで管理する緊急時の携帯メールソリューション「KinQ.jp」を提供している。在宅勤務で個人PCを使用する場合のセキュリティ対策では、トレンドマイクロのウイルス対策ソフト「ウイルスバスターコーポレートエディション」とクオリティのシステムを利用したWindows Updateの自動更新をセットにした1クライアント500円の「セキュリティワンコインサービス」で、低コストを売りにしている。
自宅から会社のPCを操作するには、ジュニパーネットワークスのSSL-VPN機「Secure Access」の仮想デスクトップ機能を駆使することで、アクセス端末を一時的にシンクライアント化。アクセス端末へのデータ保存を禁止することが可能で、自宅に業務データを残さないで済むのが特長だ。
パンデミック時の事業継続という点では、会議システムの需要が高まりをみせている。各メーカーの感触としては「一般企業のほか、学校や自治体からも問い合わせがある」(ブイキューブ)、「売り上げは伸びている。ニーズが高くなってきている大きな要因の一つがパンデミックだ」(ポリコム)という。パンデミック対策の高まりを受けて、各社とも売り上げを伸ばしているようだ。拠点同士の会議には専用端末型の会議システムで、自宅からの会議参加にはPC型で、拠点間の会議に自宅待機者が参加する場合はそれぞれを組み合わせて活用するなど、状況に応じた会議の開催が可能だという。
パンデミック対策は、「もしも」の事態を想定した、いわば先行投資。普段使わない緊急時利用のライセンスを大量に購入する企業は少ないだろう。そうした観点からすれば、高セキュリティで利用しやすく、加えて多様な勤務形態に対応する統合的なソリューションが求められていることになる。いかに顧客の要望に沿ったソリューションを提供できるかは、ベンダーのコンサルティング力・提案力にかかっている。(信澤健太)