ソニーはCSR(企業の社会的責任)の一環としてアフリカの経済・社会の発展に向けた社会貢献活動を加速している。「For the Next Generation」を掲げ、グローバルな問題の解決に向けた取り組みを展開中だ。また、FIFA(国際サッカー連盟)のオフィシャルパートナーとして2010年に南アフリカで開催されるサッカーワールドカップを支援するといった背景もある。同社のアフリカへの支援活動をレポートする。

NPOサペーシ・ジャパンが10月1日に行った南アフリカへの中古移動図書館車の出港式

今回は埼玉や岩手、奈良などから寄付された12台の中古移動図書館車が南アフリカに送られる
子どもたちの識字率を高める
アフリカへの社会貢献活動の一つが、南アフリカ(南ア)への移動図書館車プロジェクトへの協力だ。現地の初等教育を支援するNPO(非営利組織)法人のサペーシ・ジャパンが南ア教育省と実施しているプロジェクトで、日本の中古移動図書館車を南アに輸送。図書館車が南アの遠隔地にある小学校を回り、英語や現地語の教科書・参考書を貸し出すことで、子供たちの識字率や学習能力の向上につなげる取り組みだ。

移動図書館車はソニーが寄贈した英語の児童書を積んで南アフリカの各地を回る
ソニーでは、2008年からプロジェクトに参加しており、現地語の図書購入のために寄付を行ったほか、ソニー南アフリカやソニー・オーストラリアなどグループの海外法人6社の社員が約5700冊の英語の児童図書を寄贈した。

中鉢良治 ソニー副会長
10月1日にはサペーシ・ジャパンが、埼玉や岩手など全国各地から集められた今年分の中古移動図書館車12台の出港式を東京・晴海埠頭で実施した。式には中鉢良治副会長が出席。「南アフリカはソニーがアフリカで唯一事業拠点を置いている国。来年は日本との交流100周年を迎え、当社がパートナーを務めるワールドカップも開催される。今後も継続的に支援をしていきたい」と挨拶した。

08年に実施された「南アフリカ移動図書館車プロジェクト」でのひとコマ
サッカーを通じHIV/エイズ啓発
アフリカへの社会貢献は、ガーナでも実施。独立行政法人のJICA(国際協力機構)と共同でHIV/エイズ啓発・教育プロジェクト「JICA and Sony For the Next Generation in Ghana 2009」を6月24日~7月3日の期間で開催した。
プロジェクトはJICAが支援し、ガーナ関係機関が開催する「マスメディアを通じたエイズ教育プロジェクト(Project for HIV and AIDS Prevention through Education 、略称:HAPEプロジェクト)」のHIV/エイズ啓発・教育イベント開催に協力した。
具体的には、ビデオプロジェクタ、ブルーレイ・プレーヤー、オーディオミキサーで構成する200インチの大型映像装置を設置。FIFAの了解を取り、日頃テレビを観る機会のない地方の若者たちなどに、同時期に南アフリカで開催された「FIFAコンフェデレーションズカップ 2009」の生中継映像や2006年ワールドカップのガーナ戦・録画映像など無料で上映した。

上映したサッカーの映像を熱心に観るガーナの子どもや若者たち
ソニーでは、サッカーを通じてより多くの人々をHIV/エイズの啓発・教育イベントに集客することで、HIV/エイズ教育の普及促進を図ったという。
イベントはガーナの7都市で開催。JICA単独での開催の2倍以上になる9000人がイベントに参加し、会場に設置されたHIV/エイズのカウンセリング・検診会場には3倍の約1100人が訪れた。

ガーナでは「HAPEプロジェクト」に協力。会場に大型映像装置を設置し、ワールドカップの映像などを無料で上映した
ソニーはアフリカを社会貢献だけでなく、世界的なビジネス展開上でも重要視しており、今後も同地域での支援活動を積極的に行っていく考えだ。