サイボウズの事業戦略が大きな曲がり角を迎えている。海外事業の失敗で2005年に米国現地法人を清算したほか、エンタープライズ市場では苦戦を強いられており、「単独での事業展開に限界を感じた」(青野慶久社長)として、マイクロソフトとグループウェア製品の開発・販売で業務提携することを決断した。「10年に1度あるかないかの大きなチャンス」をものにして、念願のエンタープライズ市場攻略の第一歩を踏み出せるかどうか。マイクロソフトのグローバルチャネルとプラットフォームを活用し、事業拡大を図りたい考えだ。
マイクロソフトの協力仰ぐ
サイボウズは提携の第一弾として、「Microsoft Office SharePoint Server」を開発プラットフォームとしたグループウェアの新製品をマイクロソフトの技術支援を受けて開発し、2010年上半期中の販売を目指す。販売目標として3年間で、国内の大企業を中心に100社への導入を掲げている。「これまで築いてきた販売パートナー網以外のところを開拓できるのがメリット。SharePoint上で動くグループウェアを作ったことで、マイクロソフトのパートナー企業網も活用していきたい」(青野社長)としている。
協業の具体的な内容については今後、開発中の製品に関する情報を提供する「先行情報お届けサービス」を実施するほか、共同でニーズのヒアリングやマイクロソフトの大手町テクノロジーセンターでの顧客への共同提案などを推進していくという。
サイボウズのグループウェア製品は、国内の中堅・中小企業向けではトップシェア(ノークリサーチ調べ)だが、青野社長は「もともと中小企業向けのグループウェア製品でスタートした会社で、大企業向けに徐々にシフトしているが、なかなか攻め切れていない」として、エンタープライズ向け製品の「サイボウズガルーンシリーズ」などが市場でなかなか支持を得られない現状を説明する。
今回の協業相手にマイクロソフトを選んだことについては、マイクロソフトのパートナー企業が充実していることとグローバルに展開している点を理由に挙げる。08年7月のMicrosoft Worldwide Partner Conferenceに参加した青野社長は、「世界中から100か国、6000人を超えるパートナーが参加していている。サイボウズは1か国、60人程度だ」とマイクロソフトの販売チャネルに大きな魅力を感じたという。グローバル・大規模対応のプラットフォームである「Microsoft Office SharePoint Server」を利用し、共同でマーケティング活動を展開することで国内のエンタープライズ向け市場と海外でのシェア拡大を目指す構えだ。
一方マイクロソフトとしては、樋口社長が「SharePoint Serverは、プラットフォームの位置付け。その上にパートナーのソリューション、顧客のカスタマイズがあって初めて意味を成すパートナーシップを前提とした商品」と表現するように、サイボウズに開発プラットフォーム環境を提供することで「Microsoft Office SharePoint Server」の拡販を狙う。
「サイボウズガルーンシリーズ」などの既存製品は縮小せずに開発していく方針だが、今回の新製品と競合する懸念がある。青野社長は「既存製品とバッティングする可能性はあまり想定していない」として、むしろ顧客の選択肢を広げる考えだ。「SharePoint Serverとの連携強化で、落としていた案件を拾い、新しい市場を創造する。今後一本化するかもしれないが、現時点では考えていない」としている。(信澤健太)

マイクロソフトの樋口社長(左)とサイボウズの青野社長