クラウド/SaaS型でIT資産管理や情報漏えい防止サービスを提供するベンダーが現れた。カナダのアブソリュート・ソフトウェアは、本国に設置したデータセンター(DC)をベースに、この10月から日本でのビジネスを本格的に立ち上げる。パッケージソフトとSaaSを組み合わせて同等の機能を提供するケースは多いが、純粋なクラウド型でサービス提供するのは、「日本では当社が初めて」(同社)と、シェア拡大に向けて鼻息が荒い。
アブソリュートのサービスは、パソコンや携帯デバイスなどのクライアント端末に“エージェント”と呼ばれるソフトを入れ、カナダのDCから監視するというもの。サービス契約を結んでいるクライアント数はグローバルで約480万台に達し、ここ数年、同事業の年商は年率4~5割増で急成長してきた。
DCからは、クライアントのセキュリティ強度のチェックやノートパソコンの紛失時にデータを読み取れなくするなどの遠隔操作ができる。さらに、紛失したり盗難に遭った端末がインターネットに接続すると、自動的に自身の情報をアブソリュートに送信。MACアドレスなど機器固有の番号やネットの接続ルートなどを解析し、おおよその場所を割り出す。「盗難被害が出されたコンピュータ4台のうち3台の割合で回収につなげた」(ウィリアム・パウンド・バイスプレジデント)という実績をもつ。
エージェントは、パソコンメーカーの協力を得てファームウェア(=BIOS)に組み込む。東芝や富士通、デル、ヒューレット・パッカード、レノボなど主要メーカーの主に法人向けパソコンに組み込まれ、サービス利用時にエージェントを有効化する仕組み。BIOSにエージェントが組み込まれていない端末でも、後からHDDにインストールが可能だ。
国内での販路は、原則としてSIerなどを経由する間接販売。代理店となるSIerがユーザー企業と契約し、アブソリュートのエージェントを稼働させる。SIerはアブソリュートに集まった情報を参照しながら、「迅速で的確なIT資産管理や情報漏えい防止によって、関連するサービスの水準を大幅に高められる」(同)。すでに大手SIerから引き合いが来ているが、販路ルートの構築はまだ着手したばかり。この分野は、既存パッケージソフトベンダーがひしめく激戦区だ。エージェントをBIOSに組み込むセキュリティ強度の高さや、クラウド/SaaS型の優位性をビジネスパートナーとなるSIerがどこまで評価するかに、同社の日本でのビジネスの成否がかかっている。(安藤章司)