2009年、リーマン・ショック以降の世界同時不況で大きなダメージを受けたIT業界。先行き不透明な市況感が漂うだけに、2010年がどうなるか気になるところだ。そこで週刊BCNは、主要ベンダー81社の経営トップに今年の市場環境について聞き取り調査を実施。各社それぞれの見解があるものの、総合的には緩やかな回復が期待でき、09年に比べて市場が成長するとの回答が得られた。ただし、地方については、依然として厳しい状況が続くとの見方も強かった。
3割弱が4~6月に「IT景気回復」と予測
地方は依然として厳しい状況に
IT業界の回復時期について、ベンダー各社の予測をまとめると、多くの企業で新年度となる「4~6月」が最も高い28.4%を占めた。これは、年度が切り替わることでユーザー企業がITに対して予算を確保する可能性があるとみているため。09年度、IT投資を極端に抑えていたユーザー企業が多かったことから、「リプレースを控えているのも、そろそろ限界では」との見方から出た回答といえる。
ただし、次に多かったのが「読めない」という見解。「底が見えつつある」との見方がある一方で、「二番底に入る」心配も拭いきれないことから、「霧が晴れるまでは楽観視できない」と気を引き締めるベンダーも多いということだ。また「11年以降」との回答も多く、10年には期待せず守りの姿勢を貫くベンダーの姿が垣間見える。
「7~9月」とみているベンダーは、4月が新年度のユーザー企業が第1四半期の状況次第でITに投資する可能性があることと、ベンダー自身が上半期の締めとして案件を刈り取りたいと期待しているからとみられる。
成長率については、「5%」とみる回答が4割以上を占めた。09年と比べれば悪化することはないとみている一方で、大きな伸びは期待できないと判断しているからだ。同じ意味で、「前年並み」(0%)と回答したベンダーも多い。「分からない」と回答したベンダーがいるのは、金融業のIT投資は戻りつつあるが、製造業のIT投資がまだ底を打ったままのため。金融の投資と製造業の投資抑制を天秤にかけることが難しいと分析していることによる。
成長が期待できる地域は、「その他」が大きな割合を占めた。多くが「首都圏以外では見当たらない」「国内よりも海外のほうが期待できる」と回答している。「その他」に次いで「中部」が多かったのは、中部地域が09年に最もダメージを受け、その反動があると予測するベンダーが多いことが要因だ。09年と比較すれば、下がることはないとの見方だ。つまり、地方ビジネスは今後も厳しい状況に陥る危険性があることを物語っている。
ベンダーの見解は「期待値」も込められているが、製造業や地方が厳しいといった懸念材料がある一方、製造以外の業界や首都圏などをキーワードとして、09年と比べれば緩やかながらも2010年は回復が期待できるということである。たとえるならば、“真夜中”よりは“夜明け前”という表現が適している。(佐相彰彦)
【IT業界予測の回答企業】アイエックス・ナレッジ(安藤文男社長)、アイティーフォー(東川清社長)、ITホールディングス(岡本晋社長)、アイネス(五十嵐泰彦社長)、アルプスシステムインテグレーション(麻地・男社長)、インフォベック(小林晃社長)、インフォメーション・ディベロプメント(舩越真樹社長)、ウチダユニコム(眞下光雄社長)、内田洋行(柏原孝社長)、SRAホールディングス(鹿島亨社長)、エス・アンド・アイ(藤本司郎社長)、SAPジャパン(ギャレット・イルグ社長)、NEC(矢野薫社長)、NECネクサソリューションズ(森川年一社長)、NECネッツエスアイ(山本正彦社長)、NECフィールディング(中西清司社長)、NTTコムウェア(杉本迪雄社長)、NTTソフトウェア(伊土誠一社長)、NTTデータ(山下徹社長)、NTTデータシステムズ(荒田和之社長)、エプソン販売(平野精一社長)、応研(原田明治社長)、OSK(宇佐美愼治社長)、大塚商会(大塚裕司社長)、オービックビジネスコンサルタント(和田成史社長)、OKIデータ(杉本晴重社長兼CEO)、キヤノンITソリューションズ(武井尭社長)、コア(簗田稔社長)、シーティーシー・エスピー(熊崎伸二社長)、JFEシステムズ(岩橋誠社長)、JBISホールディングス(内池正名社長)、JBCCホールディングス(石黒和義社長)、シマンテック(加賀山進社長)、ジャステック(神山茂社長)、新日鉄ソリューションズ(北川三雄社長)、ソフトクリエイト(林宗治社長)、ソフトバンクBB(溝口泰雄・取締役常務執行役員コマース&サービス統括)、ダイワボウ情報システム(野上義博社長)、DTS(赤羽根靖隆社長)、TDCソフトウェアエンジニアリング(谷上俊二社長)、デジタルアーツ(道具登志夫社長)、電算システム(宮地正直社長)、東京エレクトロンデバイス(砂川俊昭社長)、東芝ITサービス(石橋英次社長)、東洋ビジネスエンジニアリング(石田壽典社長)、トレンドマイクロ(大三川彰彦・取締役日本地域担当)、日興通信(鈴木範夫社長)、日商エレクトロニクス(大橋文雄社長)、ニッセイコム(横山茂郎社長)、日本IBM(橋本孝之社長)、日本オフィス・システム(尾崎嵩会長)、日本オラクル(遠藤隆雄社長)、日本システムディベロップメント(今城義和社長)、日本事務器(田中啓一社長)、日本ヒューレット・パッカード(小出伸一社長)、ネットマークス(大橋純社長)、ネットワンパートナーズ(齋藤普吾社長)、野村総合研究所(藤沼彰久会長兼社長)、ピー・シー・エー(水谷学社長)、日立ソフトウェアエンジニアリング(小野功社長)、日立電子サービス(百瀬次生社長)、日立ビジネスソリューション(木村伊九夫社長)、富士ゼロックス(山本忠人社長)、富士ソフト(白石晴久社長)、富士通(間塚道義会長兼社長)、富士通エフ・アイ・ピー(杉本信芳社長)、富士通エフサス(関根英雄社長)、富士通システムソリューションズ(杉本隆治社長)、富士通ビー・エス・シー(兼子孝夫社長)、富士通ビジネスシステム(鈴木國明会長兼社長)、ブラザー販売(片山俊介社長)、マカフィー(加藤孝博会長兼社長)、丸紅インフォテック(天野貞夫社長)、丸紅情報システムズ(小川和夫社長)、三井情報(下牧拓社長)、ミツイワ(飯田裕一社長)、ミロク情報サービス(是枝周樹社長)、弥生(岡本浩一郎社長)、ユニアデックス(高橋勉社長)、リコー(近藤史郎社長)、リコーテクノシステムズ(川村收社長)
(※計81社、五十音順)