・関連記事「IT業界 2010年どうなるか!?」を読む ITベンダー各社による2010年の業界予測から浮かび上がったのは、「09年と比較すれば、期待含みで若干の回復が見込めそうだが、依然として市場環境は厳しいことには変わりない」という様相だ。こうした状況下、ビジネスモデルの変革や事業領域の拡大、グローバルを見据えた戦略などで、各社とも新境地を切り開こうとしている。
販売系SIerは、サーバーを中心としたSI事業が厳しいとの考えから、クラウドに代表されるサービス型モデルを模索し始めている。自社でデータセンター(DC)を所有するために設備投資を進めるほか、SaaS提供に向けたアプリケーションの拡充を重視しており、ITシステム販売が中心のビジネスモデルから脱却しようとしている。また、ITシステム構築が完全にはなくならないと見込んで、提案面で多くの“弾”を揃え、さまざまな角度からユーザー企業にアプローチをかけるケースもある。
ネットワーク系インテグレータは、ネットワークだけでなくITシステムまでを網羅したインフラ構築を進めようとしている。一般オフィスを始めとして、DCなど大規模なネットワークとITの両方のインフラ案件を一挙に獲得しようと目論む。さらに、ユーザー企業が構築したインフラの“お守り”を強化する目的から、リモートでのインフラ運用管理など、サービス面も含めて提案している。
これは、ネットワーク系インテグレータがユーザー企業のインフラ案件で、「プライマリーベンダー(主導権を握るベンダー)」になろうとしているからだ。実際、販売系SIerによるITシステム構築が縮小する一方で、ネットワーク系インテグレータはネットワーク構築技術がユーザー企業から評価され、インフラ案件を獲得するケースが出ている。2010年は、こうした案件をさらに増やしていくというわけだ。
これに対して、開発系SIerは全体的に厳しい見通しを示しており、期待含みで2010年後半から回復の兆しがみえると分析する経営トップが少なくない。プラス要素としては、金融業のIT投資が着実に回復していることが挙げられる。金融系に強い開発系SIerは「業績拡大に手応えを感じている」と自信をみせる。反面、製造業に軸足を置くベンダーは、製造業によるIT投資の動向が依然として不透明な状況にあるため、「厳しく予測せざるを得ない」との声が多い。
不況をきっかけに、製造業を取り巻く環境は、世界規模で経営リソースの見直しが必要な局面に入っている。ユーザーの環境変化で、製造業のITシステムを請け負う開発系SIerも、グローバル対応が強く求められていることになる。(佐相彰彦)