中堅・中小企業(SMB)のIT動向に詳しいノークリサーチ(伊嶋謙二社長)で、シニアアナリストを務める岩上由高氏は、本紙取材に対して「2010年にSMB市場で需要が強まる分野」を3点を挙げた。「PC」「ファイルサーバー管理ソリューション」「モバイル機器向けSaaS」がそれだ。独自のSMBデータベース(DB)を活用した市場分析に強い岩上氏の見解から、SMB市場の行方をみる。
「PC」「モバイル関連」など3分野が有望
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| 岩上由高シニアアナリスト |
2009年は、SMB市場も厳しい状況にあった。SMBの前四半期と比べた投資DI値(増加割合から減少割合を引いたもの)がプラスに転じるのは、2010年5月と予想している。しかし、SMBのIT投資意欲が2008年並みに回復するのは、もう少し先になるだろう。当然、ITベンダーがSMBマーケットを開拓するのは、容易ではない。
そんななかにも、伸びる分野はある。注目は3点。「PC」「ファイルサーバー管理ソリューション」「モバイル機器向けSaaS型サービス」だ。
まずPCについて。不況の影響で買い控えを余儀なくされた多くの企業が、「Windows 7」の登場もあって買い替えるはずだ。煩雑になっていたPC管理手法を見直す傾向も出始め、関連ソフトやサービスを購入する動きもみられる。
一方、ファイルサーバー管理ソリューションは、いかにもSMBらしいニーズかもしれない。SMBは、大企業のように大規模ストレージシステムを構築してデータを管理するのは費用面から難しい。だが、点在するデータ格納サーバー、つまりファイルサーバーは効率的に管理したいと考えている。ラネクシーや鉄飛テクノロジーなど、複数のベンダーがそうしたニーズに応えようと製品を用意し、ソリューションの知名度も高まり、SMBにこれらの存在が知られ始めている。導入を検討しているユーザーも少なくない。
最後にモバイル。SaaSと最も親和性が高いと感じているのが、モバイル機器で活用するようなアプリケーションだ。クライアント機器側がデータやアプリをもつ必要がないのがSaaSの利点。となれば、従業員が個人で保有している携帯電話を活用しやすい。モバイル機器での活用メリットが大きいアプリを、SaaS型サービスで展開する価値はあるはずだ。
前述のように、SMBのIT市場は2010年前半は苦戦を強いられる。上記3点のようなソリューションの提案や、単なるコスト削減ではなく、業務効率化も図ることが可能な提案内容を用意する必要がある。若干だが、SMBのシステム管理者は時間的な余裕が出ている。ITベンダーにとっては、直近の売り上げには結びつかないかもしれないが、こうした時間に先のビジネスにつながるような提案をしておくことも重要だ。(談)